JR東日本は2022年春から、JR東日本管内の新幹線との在来線特急の特別車両(グリーン車、グランクラス、プレミアムグリーン)のグリーン料金、グランクラス料金を改定すると発表しました。
現在、JR東日本管内で適用されている料金は、JR6社共通のものに対して低価格となっています。
これは2002年の東北新幹線八戸延伸開業の際、JR 東日本が利用促進のために値下げを行ったことからです。
今回の改定によって殆どの営業キロ帯において、JR6社共通のグリーン料金と同水準になります。
JR東日本は『お客さまのご利用状況および経営環境の変化をふまえ』と説明していました。
実際値上げになりますが、個人的には2002年からの低価格が20年近く続いていただけ良かったというのが率直な感想です。
今回は料金がどのように変化するのかを整理し、個人的な観点ですがどのような影響が見込まれるか考察していきます。
以下の表において、『値上げ比率』『同一ライン』の項目があります。
値上げ比率は、(改定料金)÷(現行料金)で計算したものであり、現在の料金の何倍になるかを値にしたものです。
同一ラインは(現行料金)÷(改定料金)で計算し、現在の何倍のお客さんなら今と同じ収入になるかを値にしています。鉄道会社の立場に立って言えば、お客さんが何倍になったら、今の収入と比べてプラスマイナスゼロなのかということです。
これらの値は少数第三位を四捨五入しました。
グリーン料金
注目すべきは601〜700km、ここだけJR6社共通グリーン料金と異なる5600円で、1000円低くなっています。
現在のグリーン料金は八戸開業の際に値下げしたのが始まりと説明しました。
(東京・上野・大宮)〜八戸の営業キロはこの601〜700kmに当たるため、利用促進のためこの営業キロ帯を特に大きく値下げしたと予想されます。
今回の改定でJR6社共通のグリーン料金である6600円まで引き上げた場合、値上げ比率は1.58、同一ラインは0.63です。さすがに値上げ幅が大きすぎるため、ここについては他営業キロ帯と同水準の値上げ比率に抑えられたのでしょう。
今回の改定全体で言えることですが、普段からグリーン車を利用している人は、この程度の値上げに対して気にはしないでしょう。
一方で、たまにはグリーン車に乗ってみようという人は減少すると考えられます。JR東日本のグリーン席は横4列の2+2配列が多く、他社に比べて料金が低いから納得されていた面もありました。設備はそのままで料金が値上げとなれば、同一ライン程度まで利用者が減少してもおかしくないと予想します。
グランクラス
グランクラスについては元々の料金が高いため、グリーン料金と同程度の値上げ幅でありながら、値上げ比率が低くなっています。
グランクラスに乗車する客層は、値上げについて気に掛ける人はほとんどいないでしょう。
また、一般庶民がグランクラスに乗る時はある意味でアトラクション的な要素があり、多少高くなったとしても乗りたければ乗ると予想されます。そのため、値上げによる利用客の減少はグリーン車と比べて少ないでしょう。
一方で同一ラインがかなり高く、座席数は18席で元々の利用者も少ないです。1列車あたり1人利用しなくなっただけで同一ラインを大きく割り込むことが考えられます。
数は少ないとしても、ちょっと乗ってみようというお客さんもいらっしゃるでしょう。そのような方が乗るのをためらうことによる減収のリスクは高いです。
サフィール踊り子
サフィール踊り子は観光列車としての色が非常に濃いものです。
プレミアムグリーンやグリーン個室を選択する時、料金よりも座席や個室の機能が重要視されます。そのため、こちらの値上げはかなり効果的でしょう。
今回のグリーン料金改定に対して、当然反対の声が多く見られました。先にも触れましたが、特に4列シート配列は低価格のグリーン料金だから納得されていたこともあります。座席はそのままなのにも関わらず料金は他6社と同じ、これに対して反対する気持ちも非常によく分かるものでした。
しかし、グリーン車は社会的地位の高い人に向けて、その空間を提供するという役割も担っています。料金改定によって利用者が減少した一方、それによってより快適な空間を手に入れられる、そのような利点もあります。
座席サービスと空間どちらを重要視するかは本当に人によって意見が異なるため、絶対的に摩擦が生まれる訳です。
そうは言っても既にグリーン席を利用していない客側としては、JR東日本全体の収益増加につながればそれで良いかなと思います。
今回もご覧いただき、ありがとうございました。
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