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「徳島県と高知県の県境」。そう聞いたら100人中100人が辺鄙な場所と想像するでしょう。
そこに僅か10kmの路線だけを持つ鉄道会社があります。それが阿佐海岸鉄道です。
100円を稼ぐのに必要な経費を示す営業係数は830、輸送密度は136人/日(鉄道統計年報2018年度)。営業係数が日本一高い鉄道会社であることから、日本一の赤字鉄道と言われています。
そんなとんでもないローカル鉄道ですが、2021年12月に『世界初』の乗り物が走り始めました。
線路と道路どちらも走れる、その名もDMVです。
一体どういうことなのか、実際に乗ってみることにしました。
徳島県からJR牟岐線の普通列車に乗ること2時間半、終点の阿波海南駅に到着しました。
徳島駅を出発したのは早朝5:31。これの次は9:30発なので、朝一番の列車に乗る他なかったのです。
観光を含めて阿佐海岸鉄道を楽しみたいなら、徳島や阿南での前泊がオススメ。前日のうちに高速バスや特急うずしおで来ておきましょう。
車止めの延長部分には線路が伸びており、赤い車が停まっています。これこそが阿佐海岸鉄道を走るDMVです。
DMVはDual Mode Vehicleの頭文字を取っています。
2つのモードの乗り物―鉄道とバスを互いに変身するのが、モードインターチェンジと言われるこの場所です。
ここからは線路上を走行し、既存の阿佐海岸鉄道を駆け抜けます。
元々ここは線路が繋がっており、阿佐海岸鉄道とJR牟岐線の境界駅も次の海部駅でした。
しかし、海部駅は高架駅で周辺に住宅が密集していたため、モードインターチェンジを設置して線路と道路を行き来するのが困難だったのです。
そこでJR牟岐線から阿波海南〜海部のひと区間を貰って、阿波海南駅を起点にしました。
阿波海南駅にDMVがやってきたので、バスから鉄道に変わる「モードチェンジ」の様子を見てみましょう。
駅前の緑色のエリアでお客さんを乗せましたら、モードインターチェンジへ侵入。
停車後、鉄輪が降りてきまして、車体前方が押し上げられました。後輪についても少し浮き上がっています。
まさに男の子ってこういうのが好きなんでしょってやつ。運転士さんによる安全確認後、線路を駆け抜けていきました。
DMVは阿波海南文化村から阿波海南駅まで、道路上を走っていきます。
阿波海南駅から甲浦駅までは線路上を走行。甲浦駅でモードチェンジを行うと、道路上を走って再び北上し、道の駅宍喰温泉が終点となります。
土日の1往復に限っては、甲浦駅からそのまま南下して甲浦駅から室戸方面、室戸岬・海の駅とろむへ行く便もあります。
先程の便はJRと接続しており、すぐ南下するなら非常に便利。
今日は15分ほど歩いて、始発となる阿波海南文化村まで来ました。
この近くには海陽町立海南病院、海南保育所などがありまして、多少の生活利用者も取り込めるようになっています。
しかし、ここが始発とされている最大の理由は、観光客の方に阿波海南文化村を訪れてもらうため。
博物館や工芸館など様々な施設が集まっていまして、DMVに乗るだけで終わらず、この地域を知ってもらおうという取り組みです。
DMVだけでは運賃収入にしかなりませんから、周辺観光による買い物や体験など、その関連でお金を落として貰おうという訳。
今日は残念ながら朝早かったため開いていませんでしたが、名物を推し出すメニューは本当に魅力的ですね!
バス停にDMVが到着しました。
DMVは3種類ありますが、こちらは「すだちの風」と呼ばれています。
車両型式はDMV93形気動車で、トヨタ自動車のマイクロバスを改造しました。
下から覗き込みますと、ボンネット下の部分に上がっている鉄輪を見られます。
車内に入ると、座席は普通のマイクロバスです。
「鉄道にもバスにもなる車両」というよりも、「線路上を走れるバス車両」の方がしっくり来ますね。
他に親子1組と男性2人を乗せて出発です。
道路上は完全なるコミュニティバスの光景。特に珍しい感じはしないものです。
モニターではDMVについての紹介ビデオが流れており、これから向かうモードチェンジについて解説されています。
先程いました、阿波海南駅に到着。
駅前からモードインターチェンジへ差し掛かります。ここで停車しまして、運転士さんがボタンを押します。
これひとつで鉄輪が降りてきて、線路上を走行可能に。モードチェンジ中には海部高校郷土芸能部の生徒さんによる、太鼓ばやしが流れます。
運転士さんが安全確認を行いまして、鉄道軌道内に入りました。
明らかに走行音が変わって、鉄道に変わってるとハッキリ分かります。
車体が軽いためか、トロッコみたいな走りです。線路を滑っていく振動を直に感じます。
かつての会社境界駅、海部駅に到着。前方にはDMV運行開始以前に走っていた、普通鉄道車両が見られます。
信号設備の関係でDMVと普通鉄道両方を走らせられず、ここで放置されたままです。
トンネル区間は、廃線跡をバスが走るBRTみたいな雰囲気。しかし、鉄道ならではの走行音が増すので、その臨場感に違いがあります。
森の中で所々、右手に海が広がっています。
トロッコは大抵山深いところを走りますから、それに似た振動の中で、雄大な太平洋を望めるのは新鮮です。
途中の主要駅となる、宍喰駅近くには阿佐海岸鉄道本社が位置します。
徳島県海陽町から高知県東洋町に入りました。
高架線はここで途切れておりまして、モードインターチェンジにてバスモードへ。
甲浦駅は待合室を道路が巻き込むようにして、バスが降りてきます。元々高架の終着駅だったのでDMVは不可能と言われていましたが、この構造で不可能を可能にしています。
バスは北へ戻りつつ、海の駅東洋町に到着。
後ほど訪れたのですが、直売所やレストランなどかなり充実していました。昼間には海水浴を楽しむ方がいらっしゃって、キャンプ場も併設されています。
そして、道路は海の真横を走行。鉄道より近いところで、さんさんとした眩しい洗礼を受けます。
トンネルに入るところで、高知県から徳島県へ戻ってきました。
終点の道の駅宍喰温泉に到着しました。
ここにはホテルリビエラししくいが併設されており、温泉宿として宿泊できます。道の駅ですが先程より規模が小さい一方、DMVグッズなど販売されていました。
DMVは道の駅に寄ることが多いですが、車で来た方がアトラクションとして乗る需用を汲んでいると思われます。
こちらも後ほど訪れることにしまして、すぐ折返しの便に乗車。新たにお一人と、行きと同じ親子連れが折返し乗ってこられました。
甲浦駅で下車しましたら、かつての鉄道ホームへ向かう階段を駆け上がります。
DMVもカバのようにノソノソと、スロープを登ってきました。
ここでは阿波海南駅よりも低い目線で、モードチェンジの様子を観察できます。
鉄輪を線路上に下げまして、徳島県に向けて出発です。
鉄道ホームは乗降に必要ない設備なので、現在は入れなくなっています。
転落の危険を最小限に抑えるためにも、仕方ないですね…。
かつての鉄道ホームとバスホームが、三次元的な別の位置に。見た目的に鉄道が廃止されてバス転換したみたいですが、新しい乗り物へ進化しているはずです。
再び阿波海南方面に乗車しまして、この急勾配を登ります。DMVを走らせるんだという思いが、物理的に身体へのしかかってきました。
使われなくなったホームを目の前にしながら、モードチェンジで鉄道へ変わります。
お隣の宍喰駅で下車、地元の方か旅行客か微妙でしたが、親子連れが1組乗ってこられました。
先程の道の駅が徒歩圏であり、路線内で一番の主要駅となっています。
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両側にドアがある鉄道車両とは異なり、DMVはバスのように片側だけ。
そのためホームが増設されており、高架線上に構内踏切という珍しい構造物が現れました。
宍喰駅は階段を降りる必要があるため、鉄道ホームに入ることができます。
ここからDMVホームを見下ろすと、仮設ホーム感が否めません。
宍喰駅は阿佐海岸鉄道で唯一の有人駅となっています。改札には駅員さんの帽子が乗った怪しい水槽が。
和歌山電鐵のたま駅長を始めとして、地方鉄道では動物を駅長にするのが流行っています。
ここで選ばれたのは伊勢海老という、まさかのチョイス(笑)。ちなみに前任はメダカらしいです。
ミニタイルが一面貼られた、海水浴場のシャワー室みたいな壁面。駅前の小学校では子どもたちの声が響きます。
利用・予約方法/オススメのきっぷ
DMVは通常のバスと同様、整理券を取って下車時に現金で支払う方式です。ただし、事前の座席予約も可能。運転士さんが予約者を先に乗せるので、それ以外の、座席を利用することになります。
必ず着席しないといけないため、満席の場合は乗車できません。とは言え開業ブームが過ぎ去った今、乗れないことは余程無いでしょう。
予約は発車オーライネットを使用することになります。
また、土祝日に1往復運行されている室戸発着便については、全席指定席です。必ず事前の予約が必要となっており、その場で乗車することはできません。
今回使用しているのは、四国みぎした55フリーきっぷです。3日間有効で5500円。徳島〜高知まで四国右下の交通をカバーしています。
ただし、DMVについては自由席の利用となります。座席指定の場合はこのきっぷではなく、別に事前支払いの運賃が必要です。
ここからはDMVや高知東部交通バスを利用して、室戸方面へ観光しました。またご覧ください。
今回もご覧いただき、ありがとうございました。
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