大寒波に伴う降雪により分岐器転換不能、列車の立往生が起こった京都駅周辺。その数は15本に及んでおり、長時間の列車内閉じ込めが大きく取り上げられています。
翌1月25日に行われたJR西日本の会見とニュースリリースを基に、当時の状況を整理した上で原因と改善点をまとめます。
まずは当時の状況として、ホームのない場所で長時間停車した列車位置です。JR西日本の会見内容と「1月24日(火)の分岐器転換不能およびお客様の誘導遅れについて」を参照しました。
①サンダーバード33号4033M※ホームのない駅構内
19:40〜23:20(ドア閉時間3時間40分)
②湖西線普通列車1820M
19:40〜23:05(ドア閉時間3時間25分)
③湖西線普通列車2867M
19:50〜23:08(ドア閉時間3時間18分)
④新快速電車3511M
19:50〜25:05(ドア閉時間3時間40分)
⑤特急はるか42号1042M
19:50〜23:39(ドア閉時間3時間49分)
⑥新快速電車3494M
19:50〜24:24(ドア閉時間4時間34分)
⑦新快速電車3804M
19:50〜21:15(ドア閉時間1時間25分)
⑧新快速電車3498M
19:00〜22:27(ドア閉時間3時間27分)
⑨特急はるか42号8144M
19:50〜25:12(ドア閉時間5時間22分)
⑩新快速電車3495M
19:50〜21:15(ドア閉時間3時間40分)
⑪特急サンダーバード26号4026M
19:00〜23:01(ドア閉時間4時間01分)
⑫新快速電車3499M
19:00〜23:14(ドア閉時間4時間14分)
⑬快速列車800T
19:50〜23:59(ドア閉時間4時間09分)
⑭普通列車208C
21:10〜22:52(ドア閉時間1時間42分)
⑮快速列車806T
21:10〜23:19(ドア閉時間2時間09分)
1月24日19時頃、向日町駅構内にて分岐器転換不能が発生したことを受け、大阪指令所輸送指令員(それぞれの列車に指示を出す人)は20時頃に京都駅の列車発車を見合わせました。これに加えて山科駅構内・京都駅構内の複数か所でも分岐器転換不能が発生します。
指令所からの分岐器操作が不可能になったため、現場で除雪と解凍を行います。これに時間を要し、山科~高槻駅の広範囲で乗降不可な線路上に計15本の列車が停まりました。そのうち①②の2列車は23時頃から、最寄り駅まで線路上を歩く対応になっています。
線路の分かれ道に設置されている分岐器ですが、積雪によって氷塊が詰まると切り替えが出来ず、分岐器転換不能となります。これを防ぐために使用されるのが融雪器ですが、この日設置していなかったことが転換不能になった原因です。
JR西日本では6時間の積雪量10㎝以上で融雪器を設置するとのことですが、この時8㎝だったことから設置しない判断がされました。結果的に京都駅では15㎝の積雪量が観測されています。
JR西日本では電気融雪器と融雪カンテラの2つが採用されています。
『ポイント融雪器』(別名:融雪カンテラ)の自己紹介の話題がすごく拡散していますね。
先ほど駅へ行って、設置している様子を撮ってきました。
赤の○で囲ってある部分がそうです。もちろん、必要のない時は火は付けていません。
U字溝の中で、いつかの活躍の時を待っています。 pic.twitter.com/fdOtfNr3QF— 阪急電鉄 【公式】 (@hankyu_ex) January 3, 2017
阪急電鉄で使用されているものですが、こちらが融雪カンテラです。金属製の容器に灯油を入れて、それを線路下で燃やしておくことで分岐器の雪を溶かします。
私鉄各社では分岐器不転換による大規模な遅れは発生していませんでしたが、このような対応を行っていたためと考えられます。
融雪カンテラは作業員さんが直接ポイント下に設置するため、列車が走っていない間に置かなければなりません。そのため始発列車以前など早くからの判断が必要となります。一方で、電気融雪器であれば遠隔からの作動が可能です。
今回、転換不良に陥った転換器は、向日町駅2台、京都駅18台、山科駅1台の計21台です。山科駅だけは電気融雪器で機能しましたが、それ以外は融雪カンテラとなっています。
会見では記者の発言に「京阪神の中で一番雪が降る場所だが、京都駅で電気融雪機が無いのは驚き(関西テレビ鈴木)」とありましたが、その通りに思いました。日本海側ほど頻繁な大雪はありませんが、多くの列車が発着しているために大きな影響を及ぼすことは明らかです。電気融雪器を導入するか、費用対効果が合わないのであれば融雪カンテラの設置基準を弱めるなどして、大雪に備えた対応を行っていただけたらと思います。
列車立ち往生後の対応について、『お客様誘導遅れに関して、夜間の降雪の中でお客様に列車から降りていただくことに躊躇し、お客様に降車いただく判断を行うまでに長時間を要したためです。』と発表されています。
あの天候と夜間に歩いてもらうのを躊躇するのは当然のことで、可能なら転換器を復旧させて、運行再開を目指すのが自然です。この時も運行再開を目指していたため、列車を動かすときに備えて線路上にお客さんを下ろせなかったのだと思われます。運行再開時、線路上に人がいない安全確認が必要になるためです。
SNS上では運転士・車掌が指令に乗客を降ろすよう求めても、認められなかった旨の投稿が数多くありました。それらを全て信用することはできませんが、ここまで長時間に渡るのであれば、駅まで歩いてもらう方が良かったと思います。
ただしこれは結果論であるため、今後はどうするべきか決めるのは非常に難しい所です。
今回の事象においての改善点は、
・余裕を持った計画運休の実施
・あらかじめ融雪器の運用
です。
車内閉じ込めが取り上げられがちですが、そのようなことが起きないようにすることが最優先になります。立ち往生してしまった時の判断について何か言うことは難しいですが、なるべく最善の判断になるよう社内から変わってもらうしかありません。
今回もご覧いただき、ありがとうございました。
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【参考資料】
『JR西日本―1月24日(火)の分岐器転換不能およびお客様の誘導遅れについて』
https://www.westjr.co.jp/press/article/items/230125_01_press_yuki.pdf
『【ライブ】JR西日本が会見 大雪・強風で長時間乗客閉じ込め 現時点で判明している事実関係を説明【読売テレビニュース】』