今日は鹿部駅に来ています。
所在地の鹿部町は、間歇泉公園でも有名な町。温泉が沸騰すると15メートルもの高さまで吹き出します。
2022年春のダイヤ改正で、JR北海道は8つの駅を廃止します。
その内5駅は道南地区の函館本線です。
駅舎内はかなり広く、相当立派な作りになっています。
一方で普通列車しか停まらない鹿部駅、函館方面は1日7本、森方面は1日5本です。
列車の本数が少ない理由は、函館本線の線路の形にあります。
函館本線には2つのルートがあります。
特急北斗は新函館北斗駅・大沼公園駅を経由するルートで、普通列車の多くもこのルート経由です。
一方で鹿部駅があるのは本数が少ない、下のルート。これを砂原回りと言います。
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駅舎待合室とホームへの入り口の間にはこのようなスペースがあります。
防寒のために二重扉にするというのはよく見られますが、ここまでしっかり防寒策が採られているのです。
また、この空間に入ると自動放送が、列車が通過するまで横断しないよう繰り返し言っていました。
これは駅舎とホームの間にある構内踏切に、遮断器は愚か警報機もついていないからです。
警報音は鳴りますが、物理的には簡単に轢かれてしまいます。
しかし駅ホームはかなり長く、客車時代の名残を思わせます。
2022年春のダイヤ改正で、鹿部駅から3駅連続で駅が廃止になります。
鹿部駅の駅名標は廃止前でありながら、既に隣駅が大沼駅のものに変えられていました。
次の銚子口駅もまた廃止される駅。下車するのはその次、流山温泉駅です。
車内は駅名標を撮ろうと、ウロウロする鉄道ファンで賑わっています。
今回の目的地、流山温泉駅に到着しました。
10分ほど前に森方面の列車が停車しているため、折り返し4人の方が乗車されます。
一方で下車したのは僕一人。途中車で来られた方もいらっしゃいましたが、他に人がいないというのは気楽です。
まず目に付くのは、毛筆書体で太く書かれた駅名標の文字。温泉地らしい雰囲気を感じさせるもので、JR北海道標準とは全く異なります。
流山温泉は活火山・駒ケ岳の山体崩壊(流れ山)地形に由来しています。
ホーム構造は1面1線。4両編成がピッタリ収まるくらいの長さです。
現在運行されている両数に比べれば十分すぎますが、先程の鹿部駅と比べたら短いですね。
ただでさえ本数が少ない砂原回りの列車。
しかし、上下合わせて5本の列車がこの駅を通過してしまいます。
ホーム正面には道路、そして奥に大沼が見えています。
手前側の木々で隠れてしまっていますが、一応その冬景色が広がっていました。
駅の出口階段を降りてみると、真新しい虎ロープで括り付けられた立入禁止の看板が。廃止3日前ですが、その準備が着々と進められています。
さて、その駅出口の横には何やら不思議な物体が置かれていました。
これは東北新幹線200系新幹線の鼻と車輪です。
この駅には以前、駅のホームに沿って200系新幹線3両が展示されていました。
これは北海道新幹線の誘致を願ってのこと。
(Ippukucho, CC BY 3.0 <https://creativecommons.org/licenses/by/3.0>, via Wikimedia Commons)
車両の劣化や北海道新幹線の札幌延伸が決まったことでその役目を果たし、2013年に解体されました。
流山温泉駅は2002年に開業した駅です。
これはJR北海道内の在来線で最も新しい新駅となっています。
一体なぜこの駅が誕生したのか、そして廃止に至るまでについて探ってみましょう。
その理由については駅前に続くこの道の先にあります。
ロープが架けられていますが、動物が来るのを防ぐためとのことで、普通に出入りして大丈夫です。
平成初頭、JR北海道はJR東日本と共同で、ゴルフ場を中心とした複合リゾート施設を計画していました。
この頃といえば国鉄からJRになって、民間企業として色んなことに手を出し始めた時期です。
2002年には日帰り温泉の流山温泉、ダチョウ観光牧場、レストラン、彫刻公園 ストーンクレイジーの森が開業。同時にアクセス駅として流山温泉駅が開業しました。
2003年には更にパークゴルフ場、キャンプ場、スポーツ広場が開業しました。
一時期函館〜森で運行されていた、SL函館大沼号も停車しており、割と賑わっていたようです。
しかし、賑わっていたと言っても、この事業は毎年赤字が続いていました。
不採算事業だったダチョウ観光牧場、レストラン『停車場』はいち早く廃止。
さらに流山温泉、パークゴルフ場、スポーツ広場、キャンプ場、ネイチャーインも2015年2月を持って撤退しました。
2016年3月の北海道新幹線開通をチャンスとして捉えることなく廃止されたことからも、中々うまく行かなかったことが分かります。
その後は、国と北洋銀行等により組成される「6次産業化ファンド」を活用して設立された新会社『どさんこミュゼ株式会社』に事業譲渡がされました。
現在はゲストハウスが併設された、大沼流山牧場になっています。この日もお馬さんが外へ出てきていました。
また、流山温泉の建物は牧場のレストランに変貌しています。
一方で、彫刻公園だけはJR北海道文化財団によって引き続き管理されています。
この程度の維持管理であれば、そこまで負担では無いのでしょう。
この彫刻は流政之によるもの。この方は流山温泉の浴槽デザインも手掛けたそうです。
2015年以降、1日の利用客が1人以下にまで落ち込んでいたこの駅。結局リゾート地の玄関口としての役割を果たし切ることなく、20年という短い歴史に幕を閉じることになりました。
そして今春には学園都市線に新駅・ロイズタウン駅が開業します。
あちらは当別町による請願駅ですが、今度こそJRにとって良い影響があれば良いですね。
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