最北の木造駅舎として全国的な人気を誇る抜海駅。
2021年度より稚内市が維持費用を負担することによって存続してきましたが、来年度は負担を取りやめ。今年度をもって駅の廃止がほぼ確定しました。
しかし、地元住民への説明不足や稚内市議会での一般質問から、稚内市が抜海駅を積極的に廃止しようとしているように感じます。その理由はどこにあるのか、考えることにしました。
[稚内市議会]令和4年6月21日 稚内市議会6月定例会 本会議2回目②(一般質問 千葉一幸議員)
https://youtu.be/m0xwvXFJ_jQ
(7:04~)(17:22~)(25:25~)
事の発端は2019年12月、JR北海道が宗谷本線の沿線自治体に対し、1日平均乗降人員3名以下の駅について、2021年3月限りの廃止を打診したことから始まります。駅の存続を希望する場合は、自治体による維持管理、費用負担が必要になります。回答は2020年3月までとされました。
2020年12月 市長は町内会長と会い、利用促進したいという話を聞く。利便性の高い交通手段を確保する方向を示すが、地域との協議には時間がかかるとし、2021年度は維持するとJRに回答。
2021年6月 2022年度の維持管理について回答が必要に。コロナの影響も大きく協議が進まず。観光資源として活用する取り組みも道半ばであることから、2022年度も駅の維持を継続。
2022年6月 2年間駅を維持して様子をみたが、抜海駅の利用者は基準(おそらく1日あたり3名以上)に至っていないため、廃止の方向を示した。
地元住民は抜海駅を観光資源として、様々な取り組みを行っています。
『コロナ禍でレンタサイクルや、開業100年の記念イベント費用を捻出するためクラウドファンディング(CF)にも取り組んだ。JRの講習を受け、月3回の駅舎清掃や草刈り、電気系統の点検も実施。JRが示した維持管理費が年約125万円だったのに対し、無償で作業にあたることで市の負担を約100万円に収めた。』
(朝日新聞 2022年6月22日 https://www.asahi.com/articles/ASQ6P71Y5Q6PIIPE008.html より引用)
2019年に1.4人だった1日あたりの利用者数、コロナ禍を経て2022年には2.3人になったと市議会で報告。
たしかに増加度合いは小さな変化かもしれませんが、まだまだこれから増やしていこうとしていたはずです。
稚内市議会では市長の発言に大きな疑問を持つ点がありました。
それは市以外が抜海駅の維持費用100万を補填したとしても、それは認めないという立場をとっていることです。
JR北海道は維持管理費を負担してもらっているため、自身の提案を受け入れられています。確かに利用者は少ないですが、抜海駅以外にも普通列車しか停車しない駅も多くあり、普通列車全廃の障害になっている訳でもなく、デメリットは無いと言えます。稚内市にとっても市費負担は無くなるのですから、本来反対する理由は見当たりません。
市長の答弁は千葉議員の質問に対して、回答になっていない、そんな印象が強くありました。
特に、「地域住民は観光需要を取り組もうとしているが…」ということに対しても、「地元住民の足の確保に努める」という説明ばかりです。
市長からはどうしても駅を廃止して、バスや乗り合いタクシーなど代替交通を整備したいという思いが強く感じられました。
これは個人的な仮説でありますが、既に事業者と公共交通整備の話を進めており、その整備には抜海駅の廃止が条件と言われているのではと思われました。
もしそうならば、地域住民にとっては集落から遠い抜海駅を残すより、路線バスを整えてもらった方が良いことになります。
しかし、観光産業面では駅の廃止の影響を受ける人も多くいるのが現状。そして、仮に地元住民の多くにとって良いことだとしても、納得行く議論・説明は必要です。やはり、十分な議論がないまま廃止を強行するような姿勢な見られたため、今回不信感が生まれているのだと感じます。
抜海駅を存続させたいという意見は、自身が鉄道ファンだからというポジショントークだと思います。しかし、それを求める人たちが資金を集め、必要と考えない側の負担を肩代わりしても、十分な議論無く廃止しようとする。それはどう考えてもおかしいでしょう。
地元の方々の努力が行政によって潰されてしまう、そんな状況を目の当たりにするのは、辛いものです。
今回もご覧いただき、ありがとうございました。
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