最後の特急、札幌行きの宗谷が出発した稚内駅、時刻は18時頃です。これから普通列車に乗りまして、ある駅へ向かいます。
ここ稚内駅は日本最北の駅として知られていますが、今から向かうのは日本最北の木造駅舎、さらには秘境駅とも呼ばれる駅です。
その駅とは稚内駅から20分ほどの抜海駅。2021年春に廃止されるのではと言われていましたが、ひとまず存続されることになりました。
当時は存続の報道がされていなかったので、せめて一回でもと思いやって来たのです。
多くの鉄道ファンに人気の抜海駅、一人だけを下ろして発車していきました。
列車が行ってしまうとホーム上の光だけが照らしており、木々が擦れ合う音しかしません。
真っ白な雪が一面に積もるホームに建つ木造駅舎は非常に趣があります。
なんとなく暖かな雰囲気が漂いますが、当然暖房も無いので外と同じ気温です。
ふんわりホームに積もった雪には僕が歩いた足跡だけがついています。
構内踏切を渡って駅舎側のホームへ向かいましょう。
駅舎には筆文字で描かれた駅名板が掛けられています。
縦書きの方の駅名板は貝殻によって描かれた代物です。
駅舎に掛けられた温度計は気温は-2℃を示しており、ここからもだんだん低くなっていきます。
ガラガラと扉を開けると不思議な空間。二重扉になっているのでこんな場所が生まれているのです。
ここの床も木板なので歩く度にコツコツと音がします。
待合室内は基本的に白っぽいクリーム色に塗られており、窓枠などには新しそうな真っ赤なペイントがされていました。
椅子と反対側にはかつての窓口や小荷物の受け渡し口の跡が残されています。
駅舎正面はご覧のとおり。駅舎内と同じようなクリーム色です。
個人的にはホームから見た駅舎のほうが古さが伝わるように思いましたが、どうでしょうか?
抜海駅の生活利用者は、ここから2kmほど先にある抜海漁港周辺の集落の方々が多いです。
そこにあるお宿、『利尻の見える小さなお宿ばっかす』さんへ訪れるのに利用する方も多数いらっしゃいます。
昼間なら抜海漁港の方へ歩いたかもしれませんが、流石にこんな真っ暗な中を歩いていくのは危ないのでやめてしまいました。
ちなみに先のお宿は抜海駅だけでなく、稚内市街の送迎までしてくださいます。
すごく寒いので帰りの列車が来るまで、待合室に籠もることにいました。とは言っても暖房やストーブなどはありませんので、風から身を守ることができるのみです。
椅子はプラスチック製のものが4人分。座布団を敷いてくれているのが本当にありがたかったです。
室内には抜海駅で撮影した、宗谷本線で蒸気機関車が走っていた頃の写真が飾られていました。
兜沼駅と徳満駅の間にあり、2001年に廃止された芦川駅の写真も展示されています。宗谷本線には抜海のような駅舎がたくさんあったんですよね。
そろそろ列車がやってくるかなという頃、外へ出てみると10分遅れるというアナウンスがされました。
冬の雪が降っている頃だからこそ夜中に白いホームが浮き上がっていてとても素敵な光景です。
夜に来るのは若干躊躇しましたが、真っ暗な中に木造駅舎が佇み、灯りがそれを照らしてくれる光景は感動的でした。
存続が決定した今、この駅が残ってくれるよう願うだけでなく、必ず再び来ようと強く思います。
今回もご覧いただき、ありがとうございました。