第三セクター鉄道とは赤字によって廃止が検討された路線に対して自治体がお金を出し合い、主に地域輸送のために存続させる鉄道です。
そのような路線は基本的に赤字で、多くは国鉄民営化の際切り離されたことで生まれました。
一方でJRの特急列車や貨物列車が走ることで収入を得ている三セク路線もあります。
しかし、今回ご紹介するのはそのような列車がないのにも関わらず好成績の鉄道路線です。
今日は岡崎駅に来ています。ここから出発する第三セクター路線、それは愛知環状鉄道です。
始まりは1960年代。名古屋方面へ向かう貨物列車を効率よく走らせるため、中央本線を並行する貨物線の建設計画が持ち上がりました。
それが岡多線と瀬戸線です。
1976年には岡多線の岡崎〜新豊田が開通。しかし利用客はまばらとなってしまい、1987年の国鉄民営化で処分対象に。
その後地方自治体による第三セクターとして高蔵寺まで繋がれ、1988年に愛知環状鉄道が誕生したのでした。
そんな愛知環状鉄道はどんどん発展、その様子を実際に乗車して見ていきましょう。
少し前までは愛知環状鉄道線用の券売機が設置されていましたが、現在はJRの券売機に集約。
大きく黄色いボタンで目立たせられていました。
きっぷの地紋はJR使用ですが、券面は愛環になっています。
愛知環状鉄道線が発着するのは0番線ホームです。愛環が「後から作られたローカル線」として扱われていたことがよく分かります。
愛環は定期利用者が多いですが、少し前まで交通系ICカードを利用できませんでした。
しかし2018年、ついに乗り換え改札機が設置されたことで利用可能に。国鉄民営化時に三セク化された路線で全国相互利用可能なICカードを利用できるのは中々珍しいです。
一方でJRとは別会社となっているため、乗り換え改札に必ずタッチするよう様々な言語で案内されていました。
向かい側には東海道本線のホーム。愛環はJRとの接続も取っています。
こちらは愛環の駅名標、まるでJRの色違いみたいです。
岡崎駅0番線ホームに高蔵寺からの列車がやってきました。
2000系と呼ばれるこの車両は相当新しく、まさにJR東海の313系と瓜二つです。
特にラインが入ったデザインの方は全く同じといっても過言ではありません。
こちらの車両は製造費を抑えたり検査などをスムーズに行うため、313系と同じ部品が使われているのです。
車内にはボックスシートが並んでいます。転換クロスシートではないのが少々惜しいところですが、かなり新しい内装。
他の鉄道会社から車両をもらったり、長い間使い古している三セクが多い一方でこちらはかなり特殊になります。
愛環は日中1時間に4本もの列車が走っています。
国鉄民営化の際開業した多くの第三セクターは1時間に1本程度。それを考えると相当多いということが伺えるものです。
岡崎駅を出発。
愛知環状鉄道線はかつてJR東海道本線名古屋方面と線路を共用していました。
そのためJR優先ダイヤとなっていましたが、2004年11月に愛環専用線が開通したことで自由にダイヤが組まれることとなったのです。
中岡崎駅は岡崎市の中心部に近い駅。
有人駅となっており、名鉄名古屋本線 岡崎公園前駅との乗り換えも可能です。
駅の近くにはカクキューの建物も建っています。岡崎市の名産、八丁味噌を作っているところです。
線内ほとんどの区間は単線となっていますが、右側には複線化可能な用地がとられています。
愛環の駅の多くは交換可能となっているため、1時間に4本というダイヤを可能にしているのです。
そんな中2面4線という非常に広い敷地を持つ北野桝塚駅に到着しました。
ここでは数分間の停車。列車を切り離し、4両から2両になります。
北野桝塚駅には愛環の車両基地、本社もあります。そのためこの駅は列車の行き先になったり、運用上重要な拠点になっているのです。
三河上郷駅からは豊田市に入りました。豊田市は非常に大きな都市ですが、三セクの愛環に転換されたことでJR線が通っていないのです。
先にも触れたとおり複線分の用地がとられた場所が長く存在するこの路線。高架だけでなくトンネルや橋桁まで複線の規格になっています。
しばらくすると愛知の産業を支えるトヨタ自動車の本社が見えてきました。
まるで1つの町になっており、最寄り駅は三河豊田駅です。
2面4線にできる用地がとられていますが、この駅でも1面2線。
ここまで愛環の良い面を多く紹介してきました。
利用者もぐんぐん上昇している一方で最近では実質的な赤字に転落しています。
その理由は高架橋などの減価償却費がかさんでいるため。必要以上の投資は出来ないというのが現状なのです。
一方でこちらは利便性の向上に大きく寄与した投資。三河豊田駅~新豊田駅では2008年に複線化が行われました。
現在この区間では平日の通勤時間帯を中心にあさシャトル、ゆうシャトルも運行。
最大で1時間に8本という超高頻度運転がされています。
豊田市の中心部、新豊田駅に到着しました。
2021年秋には閉店してしまいますが、駅前には大きな百貨店、松坂屋が建っています。
車中心の街とはいえ、中々の発展度合です。
新豊田駅までだった複線区間は突然終わりを告げます。
再びコンクリートだけの高架が並ぶようになりました。
四郷駅の駅前は1本の道が通るだけで、その周りは何もありません。
現在ここでは再開発が行われているようで、トラックなども止まっています。
愛環の沿線はますます開発が続くようです。
豊田市から瀬戸市に入りまして、こちらの八草駅はLinimoの乗換駅です。
2005年の愛知万博の時には万博八草駅として、名古屋から中央線を通って直通する快速列車『エキスポシャトル』が走り、訪問客の輸送に勤めていました。
瀬戸口駅に到着。
この駅からは相当長いプラットホームが見られるようになります。
瀬戸口駅までは平日に名古屋から中央線を経由して愛環へ直通する列車が運転されているためです。
現在は最大でも4両編成ですが、かつては10両でやってきており、それに対応したホームだったのでした。
このような列車が運行されているのは瀬戸市駅で交差する名鉄瀬戸線に対抗するため。
瀬戸~名古屋の輸送で競争しようと、より便利な直通列車が走っているのです。
瀬戸市駅からは複線になり、名古屋直通列車も含め1時間6本のダイヤも組むことができています。
トンネルに入ると100㎞/h近くの速度で走っていきます。
愛環は各駅停車ということもあってそれほど速く走ることはありませんが、トンネルで突っ切るところではスピードを出します。
最後の停車駅は中水野駅です。
高蔵寺方面のホームは10両分作られていましたが、岡崎方面は4両分しか無かったため、名古屋から直通していた最大の8両編成は半分の4両をドアカットしていました。
かつて中水野~高蔵寺では検札が行われていましたが、IC導入後はされなくなったようです。
きっぷをJR経由でなく愛環経由で購入しているかの確認だったと思われますが、利用客も多くさすがに難しいのでしょうか。
右からは中央本線が近づいてきて、終点の高蔵寺駅に到着しました。
JRからは切り離されてしまったものの、トヨタ自動車への通勤や沿線の学校への通学などまだまだ利用者の多い愛知環状鉄道。
今では年間利用者が、イレギュラーな万博開催年度の利用者に追いつこうとしています。
まだまだ利用者が行き詰まる様子の無いこの路線。
再び黒字になって更に発展していくことを望みたいです。
今回もご覧いただき、ありがとうございました。
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