中国山地を走る赤字ローカル線、姫新線に新たな車両が期間限定で仲間入りしました。
試験車両として製造されたハイブリッド車、DEC700です。
2021年から試運転を続けていましたが、遂に臨時列車として営業運転を開始しました。
DEC700が走るのは、姫新線の津山〜新見駅。臨時快速「ハレのモリ」に充当されます。
JR西日本において、新たなローカル線の姿を見られる車両。津山・新見両方向からの、アクセスも併せてご紹介します。
快速ハレのモリが設定されたのは、「森の芸術祭 晴れの国・岡山」の開催に合わせた、輸送力増強のためです。
運行日は、2024年9月28日から11月24日の土日祝。途中停車駅は中国勝山駅のみで、時刻は以下のとおりです。
下り…津山駅8:28発〜中国勝山駅9:30着・9:39発〜新見駅10:36着
上り…新見駅15:48発〜中国勝山駅16:39着・16:48発〜津山駅17:36着
津山→新見の快速ハレノモリには、こちらの列車から乗り換え可能。
岡山駅からは6:36発の快速ことぶきで、津山駅に7:51着です。東京からの寝台特急サンライズ出雲・瀬戸からも接続します。
もう1本後の、岡山駅7:01発でも津山駅8:27着で乗り換え可能。乗り換え時間が1分と短いですが、4番線から3番線への対面乗換です。
津山線では交通系ICカードを利用できますが、姫新線の津山〜新見では使えません。あらかじめ乗車券の購入が必要になります。
新見→津山の快速ハレのモリでは、岡山駅14:13発の特急やくも15号で新見駅15:15着。
山陰からも、特急やくも20号より3分乗り換えで接続します。
快速ハレのモリで使用される、DEC700についてご紹介します。
DEC700で一番印象的なのは、岡山地区のUrara、広島地区のRedWingと同じ顔つきであること。
特にライトの形が非常に似ており、デザインの統一性が見られました。
DEC700はJR西日本で初めての電気式気動車です。
ディーゼルエンジンと発電機で発電し、その電力でモーターを動かして走ります。
電気式気動車にすることで、電車・気動車のシステム統合が可能になり、メンテナンスを効率化できます。
新型車両として製造時にも、工期短縮やコスト抑制を図れます。
試験車両なので、1編成のみ製造。両側に運転台を備えた、1両編成です。
側面の音符のようなロゴマークは、「乗客や沿線住民の日常を明るく快適にすること」を表現しています。
「DEC700」の「DEC」は、「Diesel」「Electric」「Car」の略。「7」は電気式気動車、十の位の「0」は通勤・近郊型車両、一の位の「0」は設計順を表します。
スパッと直角に切られた、切妻の断面。連結時を想定して、転落防止幌も備えられています。
ホームでは駅員さん方が、横断幕を掲げてくださいました。
それでは車内へ入ってみましょう。
扉横にも快速ハレのモリを示すシールが貼られていました。
座席は2+1の転換クロスシートを配置。キハ40やキハ125ではボックスシートやロングシートの中、転換クロスシートで非常に快適性が高いです。
路線の状況によって、ロングシートにすることもできるそう。
クロスシートの場合、座席定員25席、車両定員90人です。
2両1編成を組む場合には、乗務員室を客室にしての製造もできる構造みたいです。
快速での運行には対応していないようで、運賃表には何も表示されていません。
車載型IC改札機の搭載にも対応。関西本線で導入されたように、中国地方のローカル線でもICOCAエリアが順次広がるかもしれません。
出入口に大きな段差はありますが、バリアフリー化が行われて車椅子スペースを確保。
車椅子に対応したお手洗いも装備しています。
ローカル線の新型車両あるある、超細長い室内です。その距離感にまた驚かされます。
車内における案内設備は、姫新線のものに統一されていました。
LEDの案内スクロール下には、快速ハレのモリの時刻が貼ってあります。
壁面には「推し図鑑〜鉄道員の推し〜」なるスペースが確保されており、姫新線の紹介がされています。
JR西日本のローカル線でお馴染み、制限速度25km/hにも言及。
吊り広告に関しても倉吉線〜中国勝山を結ぶ予定だった、南勝線の設置予定駅が紹介されています。
今回は新見駅から津山行きの、快速ハレのモリをご紹介します。
15:48 新見駅 発
新見駅を出発した時は、気動車らしい振動。それでもこれまでより遥かに静かであることに驚かされます。
新見→津山では、『ブラームスの子守唄』のチャイムが流れます。津山→新見では『ハイケンスのセレナーデ』です。ハレのモリ特別仕様の自動放送で、DEC700についての紹介もあります。
YouTubeでご紹介していますので、こちらをご覧ください。
トンネル内に入ると、急に振動が響き渡ります。まるで電車が気動車へスパッと切り替わったようです。
快速列車なので途中駅、最初の岩山駅を通過しました。
16:11、刑部駅で運転停車。
毎回運転停車前に、その事が放送されました。この駅は行き違い可能駅ですが、特に反対の列車は来ませんでした。
もしかしたら前後に踏切があったりする、通過禁止駅なのかもしれません。
新快速電車の車内でありながら、ローカル線ならではの25km/h。そのギャップが非常に面白いです。
16:30、月田駅で運転停車。この駅は行き違い可能駅ですらありません。
かつて使われていたホームからは、線路が剥がされていました。列車本数が減って、行き違い設備も撤去されています。
中国勝山駅到着の放送を聞きつつ、立派な目木川をトラス橋で越えます。
16:39 中国勝山駅 着
唯一扉が開く途中停車駅、中国勝山駅で9分間停車します。
国鉄時代の雰囲気を色濃く残す駅に、令和のピカピカの車両が停まるミスマッチ感。
どれだけ時代が変わったのか、知らしめられる光景です。
ここで反対方向の、普通列車新見行きと行違いました。
ローカル線で活躍するキハ120と、新時代を切り拓くDEC700が並びます。
16:48 中国勝山駅 発
快速ハレノモリは真庭市の代表駅を出発。
蒜山をはじめとして、真庭市にも芸術祭の会場があります。
16:55〜16:56久世駅で運転停車。ここでも特に行き違いは行われません。
17:04〜17:05、美作落合駅でも行き違いのない運転停車です。
17:19〜17:23に坪井駅で運転停車し、ここでは中国勝山行き普通列車と行違いました。
17:36 津山駅 着
新見駅から1時間48分、終点の津山駅に到着です。
ピカピカの真新しいDEC700で行く、中国山地の姫新線。
古めの車両が多い中国山地に、未来の姿を見ることができました。
簡単に清掃が行われ、程なくして留置線へ回送。
試験車両に乗る特別な体験ができて、非常に楽しかったです。
ちなみに「森の芸術祭 晴れの国・岡山」の開催に合わせ、津山駅も大きく変わっています。
バリアフリー化工事後に使用停止された地下通路では、JR西日本の展示が行われています。
ただし9:00〜17:00開場のため、快速ハレのモリに乗る場合、こちらを見ることはできません。
このほか、9月21日から津山線津山駅でもICOCAの利用ができるようになりました。
ICOCAの利用が可能なのは、津山線から来た場合のみ。姫新線や因美線はICOCAエリア外なので、快速ハレのモリ乗車時にICOCA利用はできません。
駅舎内もリニューアルされて、木目調のおしゃれな内装。ベンチや荷物置きには、美作杉が使われているとのことです。
ぜひ快速ハレのモリで、岡山北部の鉄道旅をお楽しみください!
今回もご覧いただき、ありがとうございました。