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【まさかの筑豊ルート】福岡→大分7時間の旅 SL客車で行く裏ルート

2024年7月7日

かつて肥薩線で走っていた、SL人吉。

肥薩線は2020年夏に球磨川氾濫で被災し、その後は鹿児島本線で走行。

2024年春、蒸気機関車の老朽化により引退を迎えました。

 

ここで使われていた50系客車とDE10形機関車を用いて、4,5月には快速ゆふいんを設定。

展望ルームから、新緑の流れる久大本線の景色をお届けしました。

 

そして今回ご紹介するのも、同じ50系客車の旅。

筑後船小屋駅から大分駅まで、7時間にも及ぶ福岡→大分の移動です。

 

注目したいのは、その運行ルート。

単純に鹿児島本線と日豊本線を通るのではなく、博多駅から遠回りして篠栗線・筑豊本線を経由します。

通常の特急列車なら選ばないルート構成ですが、一体どんな道のりが待っているのでしょう



九州新幹線が開通してから、特急列車がほぼ走らなくなった筑後地方。

ホームで列車を待っていると、矢部川の鉄橋を渡る音が響いてきました。

普段は見ることのない列車の姿、DE10形ディーゼル機関車です。

かつて蒸気機関車によるSL人吉の運行を支え、黒い車体に金色の装飾の勇ましさが伝わります。

 

蒸気機関車は引退しても、展望スペースを備えた特別な客車。

この車内からどんな景色を見せてくれるでしょうか。

 

車両側面には、サボが差し込まれていました。

今回乗車するのは、筑後船小屋→大分。翌日は大分→門司港に乗車します。門司港→大牟田に関しては、別のツアーの方が参加する形です。

 

筑後船小屋駅には待避設備がないので、停車時間は1分少々と短め。客車ならではのガコンッという揺れを感じまして、筑後船小屋駅を出発しました。

 

座席については、2人掛けか4人掛けのボックスシートが基本。

今回は1人で乗車し、2人掛けが割り当てられました。

 

レトロさを演出した客車に包まれ、九州最大の幹線である鹿児島本線を走り出します。

 

旅客における都市間輸送は、並行する九州新幹線へ受け継がれました。歴史ある鹿児島本線を北上し続けます。

 

今走っている区間を含む大牟田駅〜博多駅において、最後まで残っていたのが朝1便の特急有明。

しかし、2021年春のダイヤ改正で廃止され、現在ここを走る在来線特急は週1回の「36ぷらす3」のみです。



それでは早速、車端部に備わっている展望スペースへ。

途中の小倉駅で進行方向を変えるため、最後部にも電気機関車が連結されています。

 

特急ゆふいんの森などが走る久大本線が近づいてきました。大分駅へ直線状に連れて行ってくれる線路です。

その久大本線の分岐駅である久留米駅は、福岡県第三の都市に位置。在来線は全て止まりますが、この客車はなんと通過してしまいました。

 

かなり立派なトラス橋で、筑後川を渡ります。

毎年のように洪水で筑紫平野を襲っているイメージの川、日本有数の暴れ川として知られるところです。



14:36 鳥栖駅 着

長崎本線と鹿児島本線の分岐駅、鳥栖駅に到着しました。

団体列車は、途中一切扉を開けないことが多い印象ですが、この列車は途中ホームに降りて撮影もできます。

 

鳥栖駅のホーム上屋は古レールを使って支えられており、それも海外から輸入していた時代のもの。

100年以上に及ぶ歴史を今に伝える駅で、そこに佇む客車列車なんて似合わない筈ありません。

 

ここでは特急列車に追い抜かれることもなく、そのままの出発。時間調整だったのでしょうか。

 

指定席や自由席などのサボを入れるところにも、団体列車のサボが入っていました。

2024年春、福岡・大分デスティネーションキャンペーンが行われており、そのキャッチフレーズが「至福」「大吉」。それにちなんだ文言が刻まれているようです。



今度は前方の展望スペースへ来てみました。

こちらは黒を基調にしており、シックで落ち着いた雰囲気です。

 

このあと走る筑豊本線の起点駅、原田駅を通過。

筑豊本線の中でも、原田線と愛称付けられた原田駅〜桂川駅は、列車本数も非常に少ないローカル区間です。

 

朱色に塗られたホーム屋根の下、二日市駅で4分間の運転停車です。

ここで、特急リレーかもめ34号に追い抜かれました。



続いて、車両基地が隣接する南福岡駅でも運転停車。

列車入線とほぼ同時の15:14、お隣の普通列車折尾行きが出発しました。

この普通列車は二日市駅始発で、南福岡駅にて7分間停車していたところです。

 

南福岡駅の先では、同じく電気機関車が引き連れる貨物列車とすれ違い。



後ろからは汽笛で挨拶しているのも聞こえました。

九州最大の都市を高架で駆け上がり、九州新幹線800系とすれ違い。

昔ながらの客車列車と高速鉄道の共演が実現します。

 

いよいよ博多駅ビルの下へ滑り込み、新幹線ホームに隣接した7番のりばへ到着。

 

これから走る篠栗線直通の列車、「福北ゆたか線」はここから発着です。



15:26 博多駅 着

到着してから1分後、普通列車直方行きが隣から出発しました。

 

大きなビルが壁を作る中で、真っ黒な機関車が佇むミスマッチさが堪りません。

 

どの駅でも統一されていましたが、「団体」と書かれているのが今回の客車です。

 

鹿児島本線を経由する特急ソニックが表示されていますが、この客車は一体何本に追い抜かれるのでしょう。

 

さらにもう一本、15:45発の普通列車直方行きを先発させました。



15:51 博多駅 発

JR九州の方含めて盛大なお見送りを受け、客車の旅の本領発揮です。

 

篠栗線が分岐する吉塚駅までは、鹿児島本線が走る複線と福北ゆたか線が走る単線、計3本の線路が並んでいる状態になります。

 

お隣の吉塚駅で、早速の運転停車。福北ゆたか線の列車と行き違いました。

 

さらに鹿児島本線の列車も出発して行き、端っこの留置された特急車両と合わせて、4列車が並んでいる状態でした。

 

吉塚駅を発車しまして、鹿児島本線からお別れ。完全に篠栗線へ入ります。

 

篠栗線は全線単線。吉塚駅で行き違いましたが、2駅先の原町駅でも運転停車して行き違い待ちです。

 

香椎線と立体交差している、長者原駅を通過。

古くは線路の交差地点に過ぎず、1988年に開業したばかりの駅です。

 

篠栗駅に到着、駅舎側に停まっていた列車と行き違いました。



これまで筑紫平野を走っていましたが、篠栗駅を出発するといよいよ山の中へ。

筑豊地区へ向かっての山越えで、ちょっとした渓谷を鉄橋で渡ります。

 

トンネルも掘削されており、これまで走ってきた区間とは雰囲気がまるで違います。

 

城戸南蔵院前駅で、普通列車と行き違い。

霊場のアクセス駅になっており、それだけ山深い中に位置する駅です。

 

全長4,550mに及ぶ、篠栗トンネルに入りました。

 

トンネルを抜けるとすぐに、九郎原駅を通過。

篠栗駅〜桂川駅は1968年の開業で、駅の近くには篠栗トンネル開通記念碑が建立されています。



特急かいおうが停まる、桂川駅で運転停車。

博多行きの福北ゆたか線と行き違いでしたが、なんと原田線の姿も。

 

おそらく16:46の発車待ちだったのでしょう、1両のキハ40です。

 

桂川駅からは、筑豊本線に入ります。運行系統的に言えば、引き続き福北ゆたか線です。

 

特急かいおうが停車する飯塚駅ですが、こちらは通過してしまいました。

 

筑豊本線に関しては、飯塚駅〜鞍手駅・中間駅〜若松駅が複線になっています。

 

こちらも特急かいおうが停車する、新飯塚駅を通過しました。

 

複線区間なので、駅と駅の間でのすれ違いも難なくこなします。

 

平成筑豊鉄道伊田線の線路が近づいてきて、しばらく並行します。

伊田線にだけ設けられている、南直方御殿口駅を見られました。

 

直方駅に隣接する留置線には、ゆふいんの森が置かれていました。



17:12 直方駅

ここで8分間の停車。貨物駅のホームをイメージさせる、広い島式ホームが特徴的です。

 

反対方向の列車ともすれ違い。留置線も何本か設けられていて、車両が止まっていました。

 

直方駅を出発して、山陽新幹線の高架橋と直交します。

最近、駅設置要望を検討していると報道されたところです。

 

再び複線区間内で、蓄電池車両のDENCHAとすれ違い。鞍手駅から単線区間に入ります。

 

駅で言えば中間駅から、再び複線区間へ戻りました。



筑豊本線は折尾駅を前に、トンネルへ入ります。

これを抜けると、高架化により敷設された新しい線路へ。

折尾駅には地上駅時代、筑豊本線から鹿児島本線への連絡線上にA・Bのりばがありました。高架化に伴いすべてのホームが高架に上げられ、現在では存在していません。

 

吉塚駅から遠回りしてきた客車は、鹿児島本線と再会しました。

 

折尾駅で運転停車しまして、再び発車です。

 

筑北本線は若松駅まで伸びています。鹿児島本線のホームから少々離れており、駅舎を挟んでおくのホームです。

 

ここからは複々線になっており、黒崎駅まで福北ゆたか線用の線路を走っていきます。

 

特急列車が全て停車する、黒崎駅に到着。北九州市内の主要駅で、歴史的にも通過した列車は数少ないはずです。

 

スペースワールド駅で、白い特急ソニックとすれ違い。特急街道に入った証です。

 

黒崎駅からも旅客線と貨物線の複々線区間が続いています。一度離れていた貨物線ですが、戸畑駅で再び近づいてきました。

 

左手には赤い大きな吊り橋、若戸大橋が架かっています。

対岸には筑豊本線の終着駅、若松駅。自転車や歩行者のために渡船も結ばれています。

 

他の列車に追い抜かれることはなく、80km/h近くでの走行。客車の本気を見せつけられました。

 

大分へ向かう日豊本線の分岐駅、西小倉駅を通過。

特急ソニックと同じように、一度小倉駅まで向かいます。

 

17:57 小倉駅

ここで進行方向が変わります。既に後ろに機関車がついているので、入換作業なども必要ありません。



18:03 小倉駅 発

程なくして小倉駅を出発、西小倉から日豊本線に入ります。

 

城野駅で運転停車しまして、青いソニックに追い抜かれました。

特急ソニック43号、大分駅には19:37の到着です。

 

特急停車駅である行橋駅にて、2分の運転停車。

平成筑豊鉄道田川線が、ここから分岐します。

 

左手には遂に海、豊後水道が見えてきました。

吉富駅を通過したのち、山国川を渡ります。

 

この川が福岡県と大分県の県境、遂に大分県へ入りました。

 

大分県第三の都市である中津駅。1万円札で知られていた福沢諭吉ゆかりの地です。

速達型の特急ソニック含め、全列車が停車する中津駅。2分ほど停車していました。

 

USAの駄洒落で有名な宇佐駅で、特急ソニック45号に追い抜かれます。

 

時刻は19時半を過ぎまして、あたりはだんだん暗くなってきました。

ここから日豊本線は、上下線でやや異なる場所を走ります。今走っている下り線は1966年の複線化で追加されたルート。3km以上の新立石トンネルで立石峠を貫きます。



20:00 杵築駅 着

武家屋敷をイメージした駅舎にホーム屋根が、展望室の空間に似合います。

 

ここでは20分ちょっとの停車時間。真っ黒な機関車から前照灯だけが、眩しく輝いていました。

 

ここで、宮崎空港〜博多を結ぶ特急にちりんシーガイア14号とすれ違いました。

博多駅まで5時間49分かけて走る、日本一長距離走る在来線特急です。

 

上品な灯りとレトロなシルエット、夜になるとさらに際立ちます。

 

闇に溶け込みながら佇む、客車ならではの存在感を放っていました。

 

しばらくすると、反対方向からの普通列車と行き違い。

 

これと同時に、特急ソニック47号にも追い抜かれていました。



20:22 杵築駅 発

SL人吉時代は営業していた、ビュッフェのところで出発を迎えます。

 

大神駅で運転停車し、特急ソニック58号と行き違いました。

この先、日出駅から再び複線区間になるので、行き違い待ちもこれで最後です。

 

車内照明はかなり暗めで、夜行列車みたいな雰囲気。

無限列車的な不気味さもある空間でした。

 

奥には水色にライトアップされた、別府タワーの姿。

少し前まで工事中だったこともあり、あまり見たことのない光でした。

 

全列車が停車する別府駅でも、扉の開かない運転停車。

大阪〜別府や神戸〜大分を結ぶ、フェリーさんふらわあの広告が、大きく掲げられています。

 

ここからは別府湾沿いへ。国道10号を走る車に、大分市街地や工場の夜景を見られました。

 

ついに高架線へ登りまして、都会らしい明かりが広がってきます。遂に終点の大分駅に到着です。



21:01 大分駅 着

筑後船小屋駅から6時間46分、存分に堪能できる客車の旅が終わりました。

 

普段の特急ソニックとは違うルートで、長距離列車があまり通る機会の無い内陸部の走行。

それを客車列車で味わうことができたのは、忘れられない思い出になりました。

 

SL運行は終わってしまいましたが、これからもこのような機会があれば良いなと思います。

 

大分駅は4面8線と広々した高架駅ですが、ここにずらっと列車が並ぶのは圧巻。その一角で、当然のように機関車による客車列車が止まります。

 

しばらくして車両基地へ引き上げられ、翌日は門司港行きとして折り返すことに。

夜汽車から明日の運行に向け、回送されていったのでした。

 

今回もご覧いただき、ありがとうございました。

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