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【消滅しそう】1.5往復だけの宿毛特急 あしずり6号乗車記

2023年9月29日

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高知県を半分に折った真ん中に位置する高知駅。

本州から見てさらに奥地に向かっては、特急あしずりが走っています。高知〜中村・宿毛すくもを結んでおり、窪川駅からは第三セクター土佐くろしお鉄道へ乗り入れます。

 

しかし、ほとんどの便が手前の中村駅止まり。終点の宿毛駅に来る特急あしずりは1日1.5往復だけです。

 

今日はその中でも貴重な1本になってしまった、宿毛駅発の特急列車をご紹介します。



土佐くろしお鉄道宿毛線の終着駅、宿毛駅に来ました。

高架の行き止まり駅となっていまして、淡い水色に山陽新幹線の駅っぽさを感じます。

 

JRの駅ではありませんが、みどりの窓口が営業しています。JRのきっぷを購入することも可能です。

 

こちらで高知駅まで自由席特急券を購入。宿毛からの特急券を利用する機会はなかなかありません。

 

発車時刻表がありましたが、宿毛から出発するのは1日2本です。

高校試験日はおそらく午前帰りになるため、それに合わせた臨時列車も表記されています。

 

ホームへ上がってきました。1面2線のホームに特急あしずり6号が停車中です。特急列車は回送列車として入線してきています。

 

この通り行き止まりのホーム、2005年には113km/hで駅構内に侵入し、車止めに突入する事故が起きています。

当時の運転士に異常状態が発生していたためとされていますが、亡くなられたためはっきりとは原因が分かっていません。この後行き止まり駅の自動列車停止装置の地上子配置が改められ、さらに安全性が向上しています。

 

宿毛駅を発着する特急あしずり9・18号は新型車両2700系機動車での運転。こちら2000系気動車が走るのは、特急あしずり6号でのみです。

 

座席機能としてはコンセントやリクライニング機構の快適な新型車両に分がありますが、古くからのエンジン音など勇ましい走りを存分に楽しめます。

 

1号車自由席が先頭となっていまして、最前列からは前面展望を楽しめます。

今回はここから特急の走りをお届けすることに。

 

こちらには足元にコンセントも備わっていました。

 

1997年の宿毛線開業時、中村線へ乗り入れる特急8往復中6往復が宿毛駅まで来ていました

1999年に5.5往復、2003年に5往復、2007年に2往復と徐々に減少。2010年に3往復、2012年に3.5往復と増加したものの、2014年に1.5往復となって落ち着きました。

2019年春のダイヤ改正で特急南風13号宿毛行きが高知行きに短縮。2022年春のダイヤ改正で宿毛発特急しまんと10号が減便・時刻繰り上げ。これにより宿毛から高知を越える特急は全廃しています。

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9:05 宿毛駅 発

宿毛市の市街地を高架線で走っていきます。

宿毛市は人口18,895(2023年9月)のまち、城下町や港町として栄え、数年前まで九州の佐伯までフェリーが就航していました。それだけ九州が近い四国最果ての地です。

 

田んぼの中を高架で走ったのち、東宿毛駅を通過。宿毛市の中心部はこちらで、宿毛市の中心駅として位置づけられていました。

しかし、港周辺の需要も考慮した結果、1kmほど延伸した現在の宿毛駅が中心駅となったのです。これにより鉄道開業後、宿毛駅周辺の方が発展し始めています。

 

全長5,084mに及ぶ聖ヶ丘トンネルに入りました。並行する高中村宿毛道路にも負けない十分立派なローカル線です。



平田駅に到着しました。

特急にも対応した長いホームで、エレベーターもある立派な駅です。

ここから三原村へ村営バスが出ています。

 

そしてこの先の高架線に注目、田んぼの中を堂々と貫いていきます。

中村駅〜宿毛駅の宿毛線は1997年に開業した新しい路線、土佐くろしお鉄道が工事を引き継いで完成させました。

 

高架線やトンネルなど近代の土木技術が導入された高規格路線、特急列車も最高速度120km/hで走ることができます。

 

トンネルからそのまま中筋川の鉄橋を渡り、宿毛市から四万十市に入りました。

 

トラス橋を越えると急坂を降りているのが分かり、立体的な線形が非常に面白いです。

 

有岡駅を通過します。一線スルー構造のため、通過列車はまっすぐの線路を速度を落とさず駆け抜けていきました。

 

速度は117km/h、最高速度での運行が続いています。



四万十市の中心部までやってきました。

この辺りにはフジグランなどショッピングモールやロードサイド型店舗が多数立ち並んでおり、地方の郊外そのものの景色が広がっています。

 

四万十川を渡りまして、土佐の小京都とされてきた地区へ。

 

中村駅には車庫が併設されており、ラッピングが施された数々の普通列車が止まっていました。

 

2面3線構造の中村駅、駅舎に面した1番線ホームに入線です。

ここで車掌さんが交代されました。

 

宿毛駅からのお客さんは自由席に4,5人程度だったのですが、中村駅からはこの通り多くの乗車。ほどんどの特急あしずりが中村駅発着になっている理由が分かった気もします。



9:24 中村駅 発

窪川発中村行き普通列車と行き違いまして、中村駅を発車しました。宿毛湾で秋から冬に見られる、だるま夕日が描かれています。

 

中村駅〜窪川駅の土佐くろしお鉄道中村線は、1970年に全通。元々国鉄中村線でしたが、民営化の際第三セクター土佐くろしお鉄道へ移管されました。

 

すぐに山の中へ入りまして、トンネル区間にもなります。

 

津波タワーが現れたところで、宿毛駅から久しぶりに海が近づきます。



ここで土佐入野駅に到着です。

2006年に佐賀町と大方町が合併して、黒潮町になっています。

近くの入野海岸には砂浜美術館があって、GWには砂浜Tシャツアート展が行われます。

 

2003年に開業した中村線で一番新しい新駅、海の王迎駅を通過。

非常にユニークな駅名ですが、後醍醐天皇の子、尊良親王の流刑地だったことに由来します。

 

だんだんと海が近づいてきまして、いよいよ太平洋を望めるポイントへ。

 

山を貫くトンネルが坂になっており、出口が海に浸かっているようにみえます。

 

そして右手に広がるのがこの景色。海岸にはゴツゴツした岩肌が露呈しており、白波の模様も細かく美しいです。

 

列車はかなり速度を落として走っており、15km/hの制限速度がかけられていました。

 

まるで観光列車かのように、白浜海岸を堪能させていただきます。

 

前方に注目していたら、作業員さんがいらっしゃいました。

後から気づいたのですが、ここは2023年6月に普通列車が土砂に乗り上げて脱線した現場。おそらくその復旧作業を行なっている時間帯は、このように速度を落として運行しているのでしょう。

 

結果的には素晴らしい太平洋の景色を楽しめて良かったですが、その理由はちょっと喜びづらいものでした。

 

鹿島に蓋をされた鹿島ケ浦、それを囲むように港町が広がります。



土佐佐賀駅に到着しました。

2006年に合併して黒潮町になる以前、佐賀町の代表駅でした。

カツオが有名みたいで、そこらじゅうに看板が立っています。

 

ここで太平洋と一旦お別れしまして、伊予木川沿いを走行。だんだん山の中へ入っていきます。

 

稲荷〜川奥信号場には中村線の最急勾配、23‰の坂が存在します。

 

それを緩和するべく、ここにはループ線が敷設されています。

麓から頂上へ山を登る時、まっすぐ目指すと距離は短くても坂はキツくなります。一方で山を一周しながら登れば距離が長い一方、坂は緩やかです。

坂道に弱い鉄道では、一周することで勾配を緩和することを優先し、ループ線が作られることがあります。



ちょうど一周して線路が立体交差する辺り、川奥信号場を通過します。

ここで高松発中村行き特急しまんと1号と行き違い。

時刻表上では土佐佐賀駅で行きちがうはずですが、速度を落として運行しており、ここでの行き違いになりました。

 

先ほどの信号場から宇和島方面へJR予土線が分かれています。

 

旅客案内上の分岐駅は若井駅となっていまして、予土線の普通列車は若井駅〜窪川駅で土佐くろしお鉄道中村線に乗り入れています。

 

もうすぐ窪川駅に到着しようというところ、急に滝のような雨が降ってきました。

もしかしたら先ほど行きちがった特急しまんと1号も、雨の影響で遅れていたのかもしれません。

 

予土線の鉄道ホビートレインが停車中、0系新幹線を模した人気の列車です。



11:56 窪川駅 発(6分遅れ)

ここで土佐くろしお鉄道からJR四国の方へ乗務員交代。JR土讃線に入ります。

 

最高速度は110km/hと120km/hが混じっており、トンネル区間などでは高速運行が可能です。

 

途中通過駅にもY字分岐器があったりと、トップスピードを出し続けることはできません。

 

影野駅から土佐久礼駅にかけては、土讃線通しての最急勾配25‰区間となります。

カーブによって勾配を緩和しつつ、なんとか峠越えを果たしました。



中土佐町の代表駅、土佐久礼駅に到着です。

古くから漁師町として栄え、久礼の港と漁師町の景観は国の重要文化的景観にも選定されています。少し海側へ歩くと久礼大正町市場があって、海の幸を楽しめるだけでなくその活気ある市場の光景も人気です。

 

ここで再び海がすぐ近くに。岩場ギリギリに線路が敷設されているので、覗き込むほどの区間も存在します。

 

須崎駅で特急あしずり1号中村行きと行き違い。今乗っているのと同じ2000系気動車で、NHK連続テレビ小説「らんまん」のラッピングが施されています。

 

沿岸部にはセメント工場があって、港に近い重工業地として発展しているようです。

 

ここに位置する多ノ郷駅を通過。近くに須崎東ICもあり、チェーン店が多く集まっています。

 

そして再びの山越え、今度は完全に太平洋からお別れです。

 

左手の山肌には白石工業土佐工場が貼り付いており、その姿はハウルの動く城とも言われます。

 

2km近くに及ぶ斗賀野トンネルを抜け、斗賀野駅で普通列車須崎行きと行き違いました。



佐川町に入っていまして、その中心駅となる佐川駅に到着です。

連続テレビ小説『らんまん』でモデルになった植物学者・牧野富太郎の出身地であり、駅周辺ではそれが多いにアピールされていました。

先ほど須崎駅で見た特急ラッピングも、高知県がゆかりの地であることに由来します。

 

さかわかき氷街道というイベントがあって、駅近くの『紡ぎ工房kichi』さんでいただいたことがあります。

可愛らしい見た目はもちろんですが、コーヒーの風味を程よく感じられ、中はグラノーラで冷たいかき氷とのバランスもピッタリでした。

 

列車は最高速度120km/hで、ぐんぐん加速していきます。

 

特急列車は停車しませんが、日高村の代表駅である日下駅を通過します。

2022年に日高村へ駅舎が譲渡されて、現在改修工事が行われているようです。

 

雨で少々濁りめですが、水質日本一と言われる仁淀川を渡ります。



いの町の中心駅、伊野駅に到着です。

『竜とそばかすの姫』の聖地とされており、駅名標もデザインが変えられていました。

 

高知市を中心に走る路面電車、とさでん交通がここから並行します。

 

立体交差で線路を越え、高知中心部に向かって離れていきました。

 

半分くらいの特急列車が停車する、朝倉駅を通過します。奥に見える白い建物が、高知大学です。

 

坂本龍馬が泳いだとも言われている、鏡川を渡ります。

 

こちらも一部特急列車が停車する、旭駅を通過しました。

 

高知市中心部へ入りまして、2008年に連続立体交差事業が行われた高架区間へ。途中の円行寺駅、入明駅も高架駅になっています。

 

そのおかげで高知城の天守閣をはっきり見られました。



11:06 高知駅 着(10分遅れ)

特急南風12号と接続しており、対面乗り換えで岡山へ行くことができます。

せっかくなら直通列車として走ってほしいと思ってしまいますが、車両運用上の観点からも高知駅で分割した方がやりやすいんでしょうね。

 

今ではかなり本数を減らしてしまった、宿毛駅発着の特急列車。行くまでが大変な気もしますが、是非機会があれば乗ってみて下さい。

 

今回もご覧いただき、ありがとうございました。

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