多くの外国人観光客がやってくる古都京都。モダンな幾何学的構造物によって形成される京都駅は、コロナ禍が明けて大きな賑わいを見せています。
今回ご紹介するのは、そんな外国人観光客がたくさん乗車する空港特急です。
日本一長いプラットホームを構成する0番線ホームの相方、30番線ホームに向かいます。
停車中の列車はハローキティに憑依された特急はるか。外国人に大人気のキティちゃんに誘われ、京都〜関西空港を結びます。
おでこが出っ張ったこちらの車両は281系、2020年からは増結のため新型車両271系電車も投入されました。
2023年春のダイヤ改正より開業した、大阪駅地下ホームにも停車します。
この特急はるかの走行ルートは非常に面白いもの、鉄道成分を濃くしつつ、どの線路を走っているのか観察してみましょう。
特急はるか17号は京都駅30番線ホームを出発。基本的には毎時00,30に京都駅始発です。
広めのプラットホームの向こう側には、4面3線の嵯峨野線ホームが頭端式ホームで並んでいます。
ここで特急はるかは、嵯峨野線の線路へ入ってしまいました。
新大阪方面へ向かうということは、東海道本線(JR京都線)を走っていないとおかしいはずです。
ここで京都駅出発後の走行ルートを見てみます。
今走っているのは東海道本線ではなく貨物線、向日町の車両基地まで繋がっている線路です。嵯峨野線も一部分だけこの線路を走っています。
嵯峨野線が右へ離れ、特急はるかは左の貨物線へ。
しばらくすると、嵯峨嵐山方面からの列車が来ていました。
嵯峨野線は全線複線化されましたが、京都駅構内の線路は単線になっています。そのため、特急はるかが単線区間を抜けないと、嵯峨野線の列車が京都駅へ入れないのです。
右手には京都鉄道博物館、そして京都貨物駅を間近に見ることができます。
今度は左側を向いてみましょう、新大阪方面の新快速と東海道新幹線が駆け抜けています。
本来なら東海道本線の特急列車は、新快速が走る線路と同じところを走るはず。それにも関わらず並走しており、かなり不思議な体験です。
おまけに特急はるか号は40km/hというかなりノロノロ運転。特急列車にも関わらず、当然のように新快速にも追い抜かれてしまいました。
なぜ特急はるかは、貨物線を走っているのでしょうか。
かつて京都駅には、搭乗手続きを行える京都シティエアターミナルがありました。
そこから一番近いホームが30番線で、そこから特急はるかを発車させることにしていたのです。
しかし、30番線ホームから東海道本線の線路に入るには、いくつもの平面交差を越えなければならず、他の列車を待たせることになってしまいます。
そこで活用されたのが東海道本線と並行する貨物線、これなら他の列車に干渉せずにいられたのです。
貨物線は東海道本線の線路と立体交差、左側へ移動しました。桂川駅が見えているところ、ちょうど東海道本線の普通列車が入線しています。
この立体交差のおかげで特急はるかは、他の列車に干渉することなくスムーズに東海道本線へ入れました。
ホームに柵が設けられている横を通過しており、列車が通過するホームを走っていることが明らかです。
左手には向日町の車両基地。
京都からここまでの回送列車についても、今走ってきた貨物線を使用することで、東海道本線の営業列車運行に支障をきたさないようにしています。
阪急電車と並走しつつ、特急はるかは東海道本線に入ったことで本領を発揮します。
130km/h近くまで速度を上げて、新快速にも特急ですよと自信を持って言えます。
キティちゃんは当たり前のように、緩行線の列車も追い抜きます。
しばらく通常通り東海道本線を走ってきましたが、茨木駅を通過後、また不思議な動きを見せ始めます。
大阪貨物ターミナルからやって来た貨物線が、左手より近づいてきました。
この線路は東海道本線を立体交差で越えて右側へ。
さらに特急はるか号も高架線を登っていき、東海道本線の線路たちを越えて一番右へ移動させられました。
関西空港方面へ向かう線路へ接続するため、この時点で東海道本線から離れ、並行する貨物線に入ったのです。
特急はるかのルートを簡単に描くとこの通り。茨木駅を過ぎたところで東海道本線を立体交差で越え、一番北側へ移動しました。
千里丘駅横を通過する時も、ホームがないところを走っており、東海道本線から外れたことが分かります。
現在は吹田貨物ターミナル駅のすぐ真横を走っています。分岐などが無いのでそれなりの速度を出していました。
今度は左手から、おおさか東線がやってきました。
こちらも元々は城東貨物線だったのですが、旅客化されて多くの通勤客を輸送しています。
右に架かっている鉄橋は北方貨物線。
大阪駅を通らず東海道新幹線に沿って線路が敷設されており、旅客列車は1年に1回程度、団体臨時列車しか走りません。
そしてもう一本、大阪駅地上ホームを通らない梅田貨物線という線路があります。この特急はるかはこの線路を走ることになるのです。
新大阪駅の3番線ホームに入線しました。ここは貨物線でホームは無かったのですが、2010年代に作られた形です。
淀川を渡っている時、左手には東海道本線の複々線が走っています。
その先JRバスの車庫を見ながら、大阪駅地上ホームへ向かう東海道本線が離れていきました。
ここからは、2023年春のダイヤ改正から生まれ変わった区間です。
以前まで梅田貨物線は地上を走っていたのですが、大阪駅うめきた地下ホームが作られて、そこに停車するため地下化されました。
それまで梅田貨物線は大阪駅を通っておらず、特急はるか・くろしおは大阪駅に停まることができなかったのです。
関空特急らしい中国語で、「大阪」が見られるとはかなり歴史的なこと。
真新しい大阪駅うめきた地下ホームに到着です。
21番線ホームにはフルスクリーンホームドアが採用されています。ふすまのような構造で、あらゆる列車のドアに対応した世界初の技術です。
大阪駅を出発すると単線に。このため特急はるかは大阪駅の手前ですれ違うことが多いです。
地上へ出ると、大阪環状線福島駅の目の前を通過。ここの踏切も地下化に際して地面を削ったりと、工事が急ピッチで行われています。
大阪環状線の高架の高さまで登ってきました。この時点では引き続き貨物線を走ったままです。
野田駅が見えていますが貨物船にホームは無く、ただ駅の横を通り過ぎているだけということ。
ここで特急はるかは大阪環状線線内回りに入ります。
平面交差なので、内回りの列車が外回りの線路を走っており、一瞬逆走区間が存在することに。
その直後に西九条駅を通過。プラットホームに面したところを走っており、完全に大阪環状線を走っていることが分かります。
ここでの特急はるか走行ルートを、簡単な配線図で示しました。
貨物線を走っていた特急はるかは途中で大阪環状線へ、この過程で一部逆走区間が存在しているのがお分かりいただけるでしょうか。
貨物線から大阪環状線へ入らなかった場合西九条駅から分岐する桜島線安治川口駅周辺の貨物駅へ至ります。昔は大阪駅の近くに梅田貨物駅があったのですが、その役割を大阪港近くに移しました。
ここで特急くろしおがすれ違い。この特急も同様に梅田貨物線を通っており、基本的に新大阪発着の特急列車になっています。
左手からJR難波駅より来た大和路線が近づき、新今宮駅の直前で関西空港へ行ける線路に入ります。
左手に注目していると、新世界のシンボルである通天閣を見られました。
大阪ミナミからのお客さんを拾うべく、天王寺駅に到着です。
天王寺駅を出発するところでは、日本一高いビルあべのハルカスも見上げられます。ちょうど反対方向の特急はるかが滑り込んでいきました。
大阪環状線から阪和線に入って大和路線と立体交差。あちらは奈良へ向かいます。
大阪府第二の都市である堺市を走行中、大仙古墳の縁を走っていました。特急はるかは堺市内に止まりません。
関西空港線が分岐する日根野駅を通過。
関空快速の場合はここにも停車し、和歌山駅発着の紀州路快速と連結・解結作業が行われます。
ここから特急はるかは関西空港線へ。立派な高架橋によってカーブを描きます。
遠くにはりんくうタウンの観覧車や、スターゲイトホテル関西エアポートが現れました。突如現れるビルの存在感が凄すぎます。
ここで南海本線と立体交差し、南海空港線が分かれてきました。
りんくうタウン駅から先は、南海とJRの共用区間になります。
世界最長のトラス橋とも言われる、関西空港連絡橋へ。
ちょうどすれ違いました、特急はるか京都行き。こちらが新型車両271系です。
京都駅からは1時間半程で、関西空港駅に到着しました。
南海の関空特急ラピートも到着、4線で列車が並びました。
乗り換えができない貨物のために、直接線路を結ぶ貨物線。それゆえに非常に便利な路線として活用されている、代表例と言えます。
特に慣れない土地で乗換を避けたい外国人観光客にとっては、ありがたい存在のはずです。
路線図を見ているだけじゃ分からない面白いルート。
鉄道ファンだからこそ理解できるこの走行に、ぜひ注目してみてください。
今回もご覧いただき、ありがとうございました。
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