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【毎年ダム湖に沈む橋】日本一美しい廃線「タウシュベツ川橋梁」見学ツアーに参加[2305タウシュベツ(3)]

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日本一美しい廃線跡と言われる、タウシュベツ川橋梁。

毎年ダムに沈み、-20℃で凍てつく厚い氷に削られていきます。

 

これがあるのは北海道の内陸部、帯広駅から十勝三股駅を結んだ国鉄士幌線の廃線跡です。

 

国鉄士幌線は糠平ダム建設時、1955年にルートが変更されました。

タウシュベツ川橋梁はルート変更前の旧線であり、70年近くダム湖に沈み、姿を現しを繰り返しています。

今回はタウシュベツ川橋梁を訪れるツアーに参加しましたので、その様子をお届けします。

 

旭川駅よりバスで3時間近く、ぬかびら源泉郷へやってきました。

上士幌町鉄道記念館にて国鉄士幌線の展示を見学、ここからタウシュベツ川橋梁のツアーに参加させていただきます。

 

ツアーの時間は、9時~11時30分/14時~16時30分(10月・11月は13時〜15時30分)の1日2回。今回参加するのは14時〜です。

バスなど公共交通機関との接続が難しいのですが、旭川からの急行バスノースライナーみくに号がちょうど良かったです。

 

集合場所へ向かう途中、フツーにエゾシカいるんですが…アセアセ

 

集合場所は糠平温泉文化ホール。白い建物に赤い屋根が目印です。

 

前日までに予約が必要となっており、参加費は大人4500円。

ここでレンタル長靴に履き替えて、車へ乗り込みスタートです。

 

大体6人ずつのグループに分けられ、それぞれにガイドさんがついて下さいます。

先ほどバスで来た道を戻るようにして、国鉄士幌線の終着駅だった十勝三股駅方面へ走ります。

 

国道273号より外れまして、タウシュベツ川橋梁へ向かう林道に入ります。

ここにはゲートがあって、走るためには通行鍵が必要です。WEB手続きによる事前予約を要し、1日10個限定になっています。

 

ヒグマ出没中の看板も立っていました。

これがある時はヒグマに「注意」ではなく、ヒグマが「いる」ということ。

数が少なく餌の取り合いも起きないため、知床のような凶暴さはないそう。これだけ大人数でいればあまり心配する必要はありません。

 

2022年4月から鍵を1日10個として、車の台数を制限。

それまですれ違い時に脱輪する車も多かったそうですが、これにより事故もなくなったとのことです。

 

林の僅かな空洞部分が廃線跡。枕木には蟻がいて、食べられていっているそう。

 

廃線跡を道路に転用した区間にもなりまして、その上を走っていきます。

 

ここで車を降りまして、森林浴しつつ歩くことに。

ここもまさに線路跡だったところ、国鉄士幌線の旧線です。

 

白樺の他に植わっている、こちらはトドマツ。握ってみると良い香りがついて、香水に使われることもあるそうです。

 

一方でエゾマツはトゲトゲしていて、握ると痛いです。

 

もう少し進むと流木が行手を阻みます。ダムの水量が増えるとここまで水が来て、それが引いても流木だけが残っているのです。

 

それを抜けると森林と山々に囲まれた、音更川流域の景色が広がっていました。

 

そして謎のコンクリート構造物が現れます、これこそタウシュベツ川橋梁です。

 

ずっと行ってみたかった、あの景色が目の前です。

50分ほどのフリータイム、自由に橋梁周辺を歩いてまわったり、写真を撮影したりできます。

 

杖代わりの枝を片手に、急斜面を下って橋の周りを観察してみましょう。

 

5月中旬で雪解けによる川が2本できている状態。長靴なので濡れる心配もありません。

 

タウシュベツ川橋梁は11のアーチで構成された、コンクリートアーチ橋です。

この大自然の中、忽然と現れる美しさから、多くの観光客が訪れます。

 

写真だと分かりづらいのですが、表面がボロボロと削られており、アーチもかろうじて繋がっている状態。

痛々しくも自然へ還っていく人工物には、古代文明の遺跡みたいな歴史を感じさせられます。

 

現在はちょっとした川が流れる程度の場所、夏になると糠平ダムの発電取水が停止し、水位が上がることでタウシュベツ川橋梁は糠平湖に沈みます。

秋から冬にかけて完全に沈み、-20℃〜-30℃の環境では湖が結氷。

1月頃より発電に伴う放水が行われ、氷が橋の表面を削り取りながら、水位を下げていきます。

 

それだけでなく、コンクリートにも染み込んでいる湖水。水は固体になると膨張するため、内部からも劣化していくのです。

 

2003年の十勝沖地震による崩壊を最初に、2017年から立て続けに側壁崩落が起こっています。

 

左からアーチが始まり最初の柱上部は、2023年4月に崩落したばかり。

2〜4mもの塊が崩れ落ちており、最大規模とも言えます。11のアーチが全て繋がっているのは、今季が最後かもしれません。

 

周囲を見渡すと、非常に多くの切り株が点在しています。

これらはダムを建設する際に切り倒されたもので、1955年から70年近く経っても綺麗なままです。

 

通常、切り株などには苔や菌が繁殖して、土へ還っていくもの。

 

しかしこの切り株たちは毎年水に浸かるため、それらは洗い流されてしまいます。そのため、ずっとこのままの状態が保たれているそうです。

 

再び橋の高さまで登ってきました。結構な急斜面なので、上り下りはかなり気をつける必要があります。

 

士幌線のコンクリートアーチ橋は建設費を抑えるため、現地の砂利や砂を使って作られました。橋の中には川によって削られた、丸く大きな石も入っています。

 

鉄筋が入っているのは、特に強度が必要な上の部分だけです。

 

しかしこの鉄筋が重くのしかかっているため、上から崩れてきてしまっているそうです。

 

元々はツルツルのコンクリートだったはずですが、当時の表面はほとんど無くなっています。

 

中の小石がゴツゴツと全体的に現れており、この痛々しさは写真で伝わらないところだと思います。

 

これから夏になると、水量が増えて糠平湖に。

木が生えている高さまで全部水に浸かるのですから、ダムの水瓶がどれだけのものか思い知らされます。

そして、今日の人間の生活を支えるためには、これだけ大規模な自然の作り変えが必要なんですね…。

 

一歩泳ぐ場所を間違えれば、ワカサギすら水に浸かれず、ピチピチ跳ねているほど。現地に行っても想像つかないことはあります。

 

こんな素晴らしいところ鉄道で走れたら、どんなに幸せだったか…と思ってしまいますが、実は現役当時の景色はそんなに良いものじゃなかったそうです。

当時、橋の周りは森に囲まれており、乗客はここに橋があることすら気づかなかったそう。

ダム建設時に全て木を伐採して、糠平湖によって洗い流されたために、このような景観が作られたのです。これは完全にダム建設によって生み出された、思いがけない副産物になります。

 

この切り株だらけの場所では、旧石器時代を舞台にしたGalaxyのCM撮影が行われています。

 

もういつまで残っているか分からない景色、絶対に一度は訪れていただきたいです。

 

ツアーはここからも続きまして、国鉄士幌線の廃線跡を巡ることができます。

現在でも凍っているという、永久凍土をトンネルで貫いているそうです。

 

こちらもコンクリートアーチ橋の第五音更川橋梁跡。

水に沈んだりしなければ、これくらい綺麗に残ります。

これは国指定登録有形文化財なのですが、タウシュベツ川橋梁はダムによって作られた景観のため、指定されません。

 

やってきたのは糠平駅〜十勝三股駅の途中駅、幌加駅跡です。

草刈りなどが行われており、交換可能だった線路だけがはっきり見える、非常に綺麗な整備状況です。

 

手動ポイントの切替も体験できて、これがまた非常に重くなっています。

 

かつては国鉄官舎があった建物も、基礎部分だけを残して苔生した状態。

 

客車時代の低いプラットホームが保存されており、道路からでも見つけやすいよう駅名標も新調されています。

 

こちらも国の登録有形文化財に指定されており、士幌線にはかなり価値高いものが多く残っていることが分かります。

 

駅舎があったのは国道と反対側、かつては向こうに町が広がっていたそうですが、もう跡形もありません。

 

再び車に乗り込みまして、出発地点に戻りつつガイドさんから解説をいただきます。

バスからも一瞬だけ見えていましたが、小さなアーチ橋の五の沢橋梁跡。

写真的にはアーチを分断している木を切りたくなってしまうところ。しかし、ここは国立公園のため、木一本どころか枝一本切るのにも申請が必要だそうです。

 

その先遊歩道が続いていまして、三の沢橋梁跡の上も歩けます。

奥には釣りをやっている人もいらっしゃいました。

 

ぬかびら源泉郷へ戻ってきました。ツアーはこれにて解散です。

 

温泉公園にはエゾシカさんたちも集まっていました。寝そべりながら草を食んでいます。

 

ぬかびら温泉公園前より、十勝バスに乗車。

帰りは路線バスで帯広駅へ帰りましょう。

16:40の出発で、ツアー終了時刻の10分後となっています。

 

国鉄士幌線に沿った廃線代替バスということで、このように廃線跡を観察することもできます。

 

こちらがタウシュベツ川橋梁を沈めた糠平ダム。道東における重要な発電用ダムです。

 

この辺りにもいくつか橋梁が残されているそう、今度来た時は是非じっくり見たいところですね。

 

上士幌駅跡地の近く、上士幌交通ターミナル周辺が町の中心部となっています。

ふるさと納税の寄付金を子育て政策に活用し、2016年には人口増加に転じました。タウシュベツ川橋梁含め観光産業も盛んで、注目を浴びている場所です。

 

音更町は人口4.4万人の町で、道内の町村では一番人口の多い町。

帯広のベッドタウンとして栄え、ロードサイド店舗が非常に多く集まっています。

 

1時間50分ほどかけまして、帯広駅バスターミナルには18:29の到着です。

 

絶対に一度は訪れていただきたい、タウシュベツ川橋梁。

車の運転が不安な方でもツアーなら安心ですし、ガイドさんの解説も非常に充実していました。公共交通機関との接続には少々難がありますが、このルートを参考にして頂けたら嬉しいです。

今回もご覧いただき、ありがとうございました。

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