JRグループの上級座席であるグリーン席。
基本的に新幹線・特急列車に備えられており、京都駅にやってきたこちらの特急列車にも連結されています。
ところが車両下部分に注目してみると、見慣れない英文字が羅列されています。
この車両はJRが持っている車両ではありません。
それでもグリーン車を名乗っているこの車、一体どういうことなのか、特徴的な違いはあるのか、実際に乗って観察してみましょう。
車内へ入ったところで、いきなりその答え合わせから始まっちゃいます。
ドア横に入っているこの広告は「智頭急行株式会社」のものです。
関西から鳥取を結ぶ特急スーパーはくとは、途中智頭急行智頭線を走ります。この路線はJRのものではなく、第三セクター智頭急行のものです。
そして、特急スーパーはくとに使われるHOT7000気動車もまた、智頭急行の車両となっています。
車内に入ったところでJRの特急車両よりも地域に密着した工夫が見られます。
例えばこの洗面台、洗面器には民芸陶器が使われており、カーテンは倉吉絣です。
鳥取県の二十世紀梨もアピールされつつ、グリーン車へ。
関西〜鳥取という都市間を結ぶ重要な特急列車のため、JRではない車両でもグリーン車が用意されたと考えられます。
座席配列は1+2、半室グリーンのため4号車の京都寄りがグリーン車となっています。
7:06.京都駅 発
特急スーパーはくとの始発駅、京都駅を出発。お隣の普通列車を追い抜いて行きます。
早速今回注目するべき、グリーン車の座席を見てみましょう。
JR西日本のグリーン車テーブルは基本的にインアームテーブル。一方でこちらは背面テーブルとなっていました。
丁寧にシールでインアームテーブルが無いことを案内しています。
確かにパッと見では出てきそうな感じです。
大きなフットレストが備えられており、もちろん靴を脱いで使用する面も。
特急スーパーはくとHOT7000形気動車は1994年より製造されています。
ちょうど現在までの折り返し地点、2009年に「なごみの空間」として、全車両リニューアルしました。
これによって普通車も同様ですが、5種類(鳥取砂丘、三徳山投入堂、石谷家住宅、宮本武蔵生誕地、西はりま天文台)の画の枕カバーがランダムにセットされています。
座席モケットについてもリニューアルと同時に変更しました。
2016年には再度リニューアルされており、普通車含め、窓側座席にコンセントを設置。
1人用座席についてはもう少し高い位置に設置されたため、こちらの方が使いやすいです。
先ほど触れた通り、特急スーパーはくとは半室グリーン。普通席とグリーン席の境は自動扉で仕切られています。
この扉にも因習和紙が使われており、フワフワした和紙ならではの表面からは、優しいタッチを感じます。
関西圏から特に利用者が多い、新大阪駅、大阪駅を出発します。
数多くの特急列車が始発駅とする両駅。その中で特急スーパーはくと、特急はるかだけが京都駅を標準始発駅にしています。
ここで本題から逸れてしまうのですが、7:34ごろに東姫路駅で列車と人が接触。ダイヤが乱れている状況で、明石駅より先の運転再開予定が8:40になっています。
まだその影響が出ていない区間、ディーゼル特急とは思わせない130km/h近くの速度でJR神戸線を駆け抜けます。
神戸市の中心駅である三ノ宮駅にも停まり、関西の主要駅と鳥取を直接結ぶことで、高速バスと競争しあうところです。
車内のLED表示器においては、明石海峡大橋について紹介されます。
特急スーパーはくとでは、このように観光案内もしてくださるので、こういったところも非常に楽しめる点です。
大きな明石海峡大橋をじっくり眺められ、山陽本線ならではの楽しみです。
明石駅に到着。ここで数分ほど停まりまして、運転見合わせ区間へ近づいて行きます。
少し進んだところ、線路上で再び停車。20分ほど停まったところで、少しずつ動き出します。
横には貨物列車が停車中、機関車に連なるコンテナたちをゆっくり抜かしていきました。
前に列車が詰まっているため、東姫路駅で少し停車しました。
通学中の生徒さんが大勢いらっしゃる頭上、発車標では運転再開の案内がされています。
出発したところですれ違ったのは、城崎温泉駅から来た特急はまかぜ2号大阪行き。
大阪〜鳥取の特急はまかぜ号も運行されており、今乗っている特急スーパーはくと1号のあとに続いているはずです。
やっとの思いで姫路駅に到着しました。ここで山陽新幹線から乗り換えて来られるお客さんも多いです。
上郡駅に到着しまして、ここから智頭急行智頭線が始まります。
乗務員さんもJR西日本から智頭急行の方へ交代。
ちょうど普通列車が停車中の、智頭急行のホーム横を通り抜けて行きます。
山陽本線と立体交差しまして、智頭急行は高架線によって北へ。
この高規格路線は、千種川と佐用川沿いを北上して行きます。
山はトンネルで貫かれ、真っ暗な中を駆け抜けます。
山陽本線と同様の130km/h運転で、この上ない疾走感です。
佐用駅に到着。
ここはJR姫新線と交差する駅。
山陽本線+智頭線経由よりも姫新線経由の方が距離は短いのですが、線形が良くスピードが出せることから、今回のルートが選ばれています。
HOT7000形気動車は振り子式気動車、車体を傾けてカーブを駆け抜けます。
智頭線内の主要駅、大原駅に到着。
智頭急行の大原車両基地が置かれており、普通列車が停車中でした。
沿線は鯉のぼりが立っていたりと、田舎らしい風景が広がっています。
ここで岡山県と鳥取県の県境である、志度坂トンネルをくぐります。智頭線で一番長いトンネルです。
その先で通過するのが恋山形駅、ちょうど反対方面の列車がいました。
この駅は「恋」の駅名に合わせて、ホーム待合所をピンク色に染め上げています。先程の広告にも採用されており、多くの方が訪れる人気の駅です。
左手からはJR因美線が合流、智頭線は智頭駅で終わり、JR因美線に入ります。
因美線の鳥取〜智頭では、普通列車も智頭急行の車両です。
智頭急行とJR西日本の間で線路使用料や車両使用料の打ち消しを行っていると思われます。
智頭急行智頭線が開業する以前、鳥取〜岡山では因美線と津山線を経由する急行砂丘が走っていました。
現在ではちょうど用瀬駅で行き違った、特急スーパーいなばに役割を移しました。
この特急列車は、JR西日本の車両が智頭急行の線路を走っています。
そして、右手からは若桜鉄道若桜線が合流してきました。
到着した郡家駅から分岐する、第三セクター鉄道。
終点の若桜駅までを結んでおり、期間限定でピンク一色のSLが登場したことでも知られます。
高架線へ登りまして、鳥取市街地を走行します。
京都から来た山陰本線と合流しまして、鳥取駅に到着です。
10:12 鳥取駅 着
最初に見つけたHOTは、HYOGO、OKAYAMA、TOTTORIの頭文字から取っています。
智頭急行が走る3県であり、それが車両型式にも刻まれているのです。
同じ「グリーン車」という名前でも、JRとは大きく違った車内デザイン。
三セク鉄道により作られたからこそ生まれた、特別な空間にぜひ乗ってみてください。
今回もご覧いただき、ありがとうございました。
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