ここは庄内地方最大の都市、羽越本線の酒田駅です。
江戸時代には北前船の寄港地としても大変栄えました。
今回乗車するのは陸羽西線です。
山形新幹線の終着駅、新庄駅から日本海側へ伸びており、余目までを結んでいます。一部列車は羽越本線へ直通し、酒田駅まで走ります。
酒田駅からは酒田港駅まで線路が伸びており、羽越本線がなかった当時、余目〜酒田も同時に庄内初の鉄道路線・酒田線が開業しました。
最上川で物資を船運していましたが、それが鉄道に代替されます。
今回乗車するのは1日1往復だけ運行されている、快速最上川です。
今度のダイヤ改正で新庄方面については、運行区間が余目始発に短縮されてしまいます。
陸羽西線は切欠ホーム0番線からの出発です。
使用される車両はキハ110系。
松尾芭蕉が『五月雨をあつめて早し最上川』と詠んだことでも知られ、陸羽西線には奥の細道・最上川ラインという愛称が付けられています。
車両デザインもそれに合わせたものです。
酒田駅時点で利用者は10人ほど。陸羽西線は1日9往復の運行で、酒田まで直通するのはうち5往復。
それでこの状態はかなり厳しいと言わざるを得ません。
一方で、快速最上川は特急並みの迫力を見せる列車と聞いています。
車掌さんがいないワンマン列車なので、一番うしろの運転台横に居座ることにしました。
14:03 酒田駅を出発しました。
途中の停車駅は、余目,狩川,古口,新庄。
快速最上川は新庄発もあるのですが、あちらは夜の運行で、停車駅も陸羽西線内はすべて停車してしまいます。
酒田駅には車庫が併設されており、特急いなほ等も留められます。しかし車庫と駅構内は直接線路が繋がっていないので、そのまま入ることができません。
そのため新潟側に一度車両を出して、進行方向を変えてから駅に入れるという、入れ替え作業が行われます。
ここにはちょうど入れ替え中の列車が停まっていました。こちらはJR東日本最新型気動車、GV-E400型です。
列車は羽越本線上を走りまして、ぐんぐん加速。
次の駅を通過する前に、100km/hまで到達しています。
この運転台から足元を見ると、怖いぐらいに線路を滑っています。
ただの前面展望ではなく、まるで自分が高速ベルトコンベアーに乗っかっているような感覚。この迫力が凄まじいです。
列車は第二最上川橋梁を渡ります。
2005年12月25日、ここではJR羽越本線脱線事故が発生しました。鉄橋を渡りきった直後の特急いなほを突風が襲って脱線・転覆。
線路脇の養豚場堆肥舎に先頭車両が突っ込み、5人の死者を出しました。現在ここには慰霊碑が建てられています。
列車は北余目駅を通過。反対方向へは701系電車が出発するところでした。
余目駅に到着しました。
酒田駅よりもここから乗ってこられる方が多く、10人以上はいらっしゃいました。
ここまでは羽越本線を走りましたが、ここから東に向けて陸羽西線に入っていきます。
それでも、100km/hに到達しそうな勢いで駅を通過していきます。この路線はかなり線形も良く、最高速度は95km/hです。
狩川駅に到着。
明らかにかつては交換が可能だった線路の形をしていました。
その後、陸羽西線の代名詞とも言える最上川が近づいてきました。
清川駅を通過すると、どう考えても勝手踏切を使わなければ行けなさそうな神社もあります。
陸羽西線には最上川、そして国道47号線が平行します。そして、この並行する道路というのが今後、陸羽西線に大きな影響を及ぼすのです。
ここは急カーブが続く最上峡と呼ばれ、土砂崩れや浸水被害が多発する難所となっています。
連続雨量150mmで通行規制が起きているのが現状です。
それを解決するために国道47号線のバイパス、新庄酒田道路が建設されています。
新庄酒田道路は高屋トンネルを掘削するのですが、それが陸羽西線の第2高屋トンネルの3m下なのです。
安全性確保のため、陸羽西線は2022年5月14日より2024年度までの約2年間、全線で全列車が運休、代行バスによる運行となります。
当初は列車の運休なしで工事を進める予定だったそうですが、安全のため運休の方向に。
実際には都市部を見てみるとトンネルがもっと近くを交差する事例もありますから、技術上は可能と思われます。しかし、その技術を投入してしまうと、コストに見合わないのでしょう。
戸沢村の中心駅、古口駅に到着です。
途中駅では唯一行き違いが可能で、反対の普通列車と交換しました。
駅を発車してすぐのファミリーマート奥には、最上川舟下りの乗船場があります。
最上川を含め、急流ではライン下りが人気ですね。
渡っておりますのは第一最上川橋梁。
羽越本線を含め、新庄〜余目〜酒田は酒田線だったので、羽越本線の第二最上川橋梁とセットになっているのです。
橋脚はレンガ造りとなっており、歴史を感じさせる構造です。
しばらくまっすぐ直線を走ってきましたが、新庄駅へ入線するため、カーブで180度向きを変えます。
そして、電化されている奥羽本線と並走。
旧国鉄新庄駅機関庫を横目に、新庄駅へ入線します。
こちらは1903年の新庄駅開業から残されている建物でして、非常に歴史的価値の高い赤レンガ機関庫です。
この日は遅れてしまいましたが、ダイヤ通りであれば所要時間は51分です。
気動車でここまでのスピードとは、山形新幹線にも負けていないように思いました。
これほどハイスペックな便が設定されている中、これから2年間の運休は、この路線の存続をも脅かしているように思えます。
陸羽西線の輸送密度は、2020年度163、新型コロナウイルスの影響が少なかった2019年度でも343でした。
今回自治体としては道路のために鉄道は一時切り捨てることを容認しているのですから、仮にJRがこの路線を廃止にした時、強く反対することは難しいでしょう。
正直今回の長期全線運休は、陸羽西線に限らずローカル線廃止に向けたデータ収集・布石に思えて仕方がありません。
風光明媚な光景の中を飛ばす列車、ぜひとも乗ってみてほしいです。
今回もご覧いただき、ありがとうございました。
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