日本で最も長い路線バスとして有名なのは紀伊半島を縦断する八木新宮線です。
その距離は166.8km、停留所の数は168であり、所要時間は6時間30分もかかります。
しかしそれは1つの路線としての記録。路線バスの中には一台のバスでいくつかの路線を直通するものもあります。
それを含めた上での最長路線、それは北海道にある沿岸バスの幌延留萌線・留萌旭川線の直通便です。
基本的には分けて運行されるこれらの路線ですが、1日1往復だけ直通する便があります。
その総距離は約217kmと路線バスとしては日本一の距離!
今回は真の日本最長路線バスのご紹介です。
幌延深地層研究センターへ歩く
今朝は5時に起床、幌延町のビジネスホテル北斗荘さんにお世話になりました。
スタート地点のバス停を目指し、朝から歩いていきます。
街を出て山に入りました。人とはまずすれ違わないので、マスクをしなくても全く問題ありません。
山の空気を楽しみます。
途中ではこれから乗車するバス会社、沿岸バスがやってきました。
全面には『はぼろ号』と掲げられており、こちらは豊富町から札幌まで走る高速バスです。
幌延町の中心部から歩いて40分、幌延深地層研究センターのバス停に到着しました。
停留所では既に乗車予定のバスが待機中です。
幌延深地層研究センターは放射性廃棄物の処分について研究するための場所。
ここに放射性廃棄物があるわけではありません。
併設されたゆめ地創館は一般向けにも公開しており、かなり分かりやすく解説がされているとのこと。是非とも一度行ってみたい施設です。
さて、バス停の6:20のところには旭川駅行と記されています。
高速バスの車両なのでそこまで違和感はありませんが、確かに行き先も旭川です。
扉は発車時刻の3分ほど前になってから開けられました。
リクライニングもできる4列シート、非常に快適です。最後部にはお手洗いも併設されています。
しかもコンセントまであるという豪華仕様です。沿岸バスは路線バス車両であっても新車にUSBポートを設置しています。
整理券はもちろん1番。時刻はかなりズレていますが、気にしてはいけません(笑)
6:20 幌延深地層研究センター出発
一人だけを乗せてバスは時刻通り出発。
朝早くに研究施設から出ていく人はいなさそうに思いますが、運行上中枢とされているようで、このバス停が始発です。
さっき歩いてきた山の中を後戻りしていきます。
幌延駅に到着。ここからはお一人乗車されました。
宗谷本線の踏切を渡ります。
少し前の6:23に始発の名寄行き普通列車が出ていったところです。
羽幌線を辿って
ここから先、バスは1987年に廃止された羽幌線に相当する道を走っていきます。
2020年に新しく架替えられた天塩大橋、羽幌線はちょうどここを走っていました。
このバスは快速なので、多くのバス停を通過していきます。
沿岸バスの1路線、豊富留萌線の停留所の数は167あり、これは正真正銘日本一の数です。
しばらく農場や草が一面に生い茂るところを走り続けてきましたが、天塩町の市街地に入ります。
天塩1のりばに到着。
ここまで乗客は観光客の2人だけでしたが、ここからは高校生の生徒さんも乗車されました。
爽やかな青空の下には風力発電の風車が並びます。
稲作の北限地・遠別町
駅舎が残されている訳ではありませんが、遠別のバス待合所は羽幌線の遠別駅跡にあたります。
その後、バスは沿岸バス遠別営業所の中に乗り入れます。
私有地の駐車場に入れられているような、不思議な感覚です。
道の駅えんべつ富士見は2020年にリニューアルオープンしたばかり。
地元特産の農作物や海産物を使った食べ物を楽しめます。
真っ青に広がる日本海
沿岸バスの名の通り、このバスは日本海沿いを走っていきます。非常に綺麗な青色は、くっきりと水平線を描いてくれていました。
廃線跡を観察するならば左側、日本海を眺めたいならば右側。それぞれ違った楽しみ方ができます。
初山別村は道内でもかなり小さな自治体、村役場の周辺にはスーパーやコンビニなどが無い時もありました。
そんな時に出店したのがセイコーマートです。
これは村長さんがセイコーマート本社に何度も出店をお願いしたのが始まり。
この場所が物流ルートにあった上、初山別村が村有地を安く提供したり、従業員を集めるのに広報したことで無事オープンすることが出来ました。
羽幌線の中心地・羽幌町
羽幌町からは日本海に浮かぶ離島、焼尻島・天売島へのフェリーも出ています。
カラフルな家が見られ、北欧チックな印象を与えられました。
様々なお店が立ち並んでおり、それなりの規模を感じさせられます。
羽幌駅跡には羽幌町をイメージしたタイル張りの壁が設置されていました。
そして駅舎跡地には沿岸バスターミナル羽幌があります。バスの頭を突っ込んで停車する形です。
ここからはかなりお客さんも増えてきました。
さらにバスは北海道立羽幌病院に停車。見た目からしてもかなり大きな病院であることが分かります。
留萌炭田で栄えた町
北海道の炭鉱と言えば夕張や釧路が代表的ですが、日本海側の留萌炭田もそれに並ぶ石炭の産地でした。
代表的なのが羽幌町ですが、そこから留萌にかけても盛んに採掘がされたところです。
羽幌線が引かれたのも炭鉱で栄えた町を結び、石炭の輸送を行うため。
しかしその殆どが閉山していき、他の炭鉱の町と同様に人口が急激に減少してしまいました。
羽幌線の終着・留萌市へ
日本海沿いを走り続けているバスからは、かつて陸の孤島ともされた雄冬峠、暑寒別岳のある陸地が見えています。
日本海を走って来た時、工業を思わせるホクレンのタンクは留萌の玄関という感じがします。
幌延から続いていた羽幌線も留萌で終了です。
このまま直進すると深川留萌自動車道に乗ってしまいますが、この路線バスは留萌市の中心部へと入っていきます。
かつての広大な鉄道用地は広場になり、その奥には小さく留萌駅が見えています。
更に、増毛方面への橋梁も残されていました。
留萌十字街に到着。
ここでは運転手さんが交代、これまで乗務していた方は停まっていた車に乗り込んて行かれます。
留萌からは4,5人ほど乗車されました。
留萌本線と並走
ここで左側に移動。おそらく留萌から先はこちらの方が楽しめるかと思います。
ぽつぽつとバス停に停まる途中、留萌本線の終着駅となった留萌駅が現れました。
留萌川を横目に、それに沿った道路を走っていきます。
すぐ横を留萌本線が通っており、大和田駅の横を通過。
この時間帯に列車は無いので、車両を見ることはできません。
こちらは藤山駅。
留萌本線を全駅訪問したとき、幌糠駅から藤山駅まで沿岸バスを利用したのを覚えています。
交換可能駅で秘境駅のひとつともなっている峠下駅手前で、留萌本線から離れていきます。
その後、バスは碧水に到着。
今では札幌都市圏だけになってしまいましたが、かつては留萌本線の石狩沼田駅まで結んでいた札沼線(学園都市線)。1972年に新十津川駅~石狩沼田駅が廃止され、碧水は途中駅が設置されていた北竜町です。
秩父別町に入り、再び留萌本線沿線の町になりました。
道の駅に設置された開基百年記念塔が見え、ここには日本最大級のスイングベルが設置されています。
函館本線沿線までやってきて、道路は広い深川駅構内を越えます。
深川の市街地はさすがにお店も多く、街からはお客さんは2,3人乗ってこられました。
国道12号で旭川へ
その後は道内最大の川である石狩川を渡ります。
深川市は道内でも有数のお米の産地のため、道の駅も『ライスランドふかがわ』です。
旭川市に入りまして、中心部へ向かう高規格道路を走り始めます。
国道12号は札幌から旭川までを結ぶ道路で、美唄市~滝川市の29.2kmは日本一長い直線道路の区間です。
トンネル脇を行く旧道の方には神居古潭があります。
道路と同じように函館本線の旧線も山を迂回していたため、神居古潭駅の駅跡へ行くこともできます。
バスはこれまでの景色とは一変して、かなり険しいところを走ります。
そこを抜けると眼下には旭川市街が広がっていました。
これまで見てきた街とはレベルが違う大都会です。
チェーン店もあるような町並みを抜け、忠別川を越えたところで函館本線の高架をくぐります。
駅前には大きなビル、ホテルが林立しており、高速バスで都会に来たのと同じ感覚です。
11:22 旭川駅に到着
立派な高架駅に併設したイオンモール。5時間2分かけてやってきたここは見慣れた道内第二の都市です。
料金は4460円、高速バスみたいな料金ですが、距離を考えれば当然です。
ちなみに八木新宮線は5350円でした。
道中には北海道らしい何もない景色が広がり、日本海や鉄道関連の観察など様々な楽しみ方ができます。
さらに高速バス車両なので非常に快適な移動ができて、八木新宮線に比べてもラクラクです。
そんな日本最長路線ですが、この長さを体験できるのも残りわずかな期間になってしまいました。
直通便の廃止!
今回ご紹介した沿岸バスの『快速幌延留萌線と快速留萌旭川線の直通便』ですが、2021年9月30日をもって終了となってしまいます。
翌日10月1日からは留萌十字街での乗り換えが必要です。
そのため1本のバスで行くことができる最長距離は沿岸バスではなくなってしまいます。
今後最長となるのは音威子府から稚内を結ぶ天北宗谷岬線の171kmです。
最長路線で無くなってしまっても、バス路線自体がなくなるわけではありません。
今日は右側の日本海を見ていたのであまり注目できなかったのですが、今度は未だに残されている羽幌線の廃線跡を見てみたいですね。
今回もご覧いただき、ありがとうございました。
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