2024年11月24日、熊本市電で新型車両がデビューしました。
熊本市中心部への足として重要な交通機関。一方で輸送力が問題視され、積み残しが日常茶飯事です。
そこで投入された、新型車両2400形電車。3両編成で定員112人は、九州の路面電車で最大となります。
全てロングシートになっており、空間の広さが特徴的。本気の輸送力を誇示する、10年ぶりの新型車両に潜入してみます。
JR熊本駅は、中心市街地からかなり離れたところに立地します。
九州新幹線全通後、駅高架化やアミュプラザ開業が行われたとはいえ、まだまだ中心市街地の規模が大きいです。
JR熊本駅東口の広場に、熊本市電の熊本駅前停留場があります。
市電のりばには時刻表が表示されており、新型車両の運用時刻が示されていました。
「◎」の付いている時刻が、今回デビューした新型低床車両2400形電車の運用です。
ちょうど中心市街地方面の市電が到着しました。
こちらは2014年にデビューした0800形電車。2400形電車が投入されるまで、熊本市電最新の車両でした。
2両編成の車両でしたが、停留場にはお客さんが残り、積み残している状態。
続いて1両の市電がやってきました。
それでもやはり長い行列が残っており、土休日の昼間でも積み残している状態です。
これを解決するのが、新型車両2400形。
熊本城の屋根と漆喰をイメージした、先進的なデザインです。
まずはお客さんが少ない田崎橋方面に乗車、新型車両の車内を見てみます。
その後、中心市街地を通る健軍町方面へ折り返し、輸送力を見てみることにしましょう。
側面の行先表示はフルカラーLED、行先を大きく示しています。
扉は3両編成中2箇所にあって、どちらからでも乗車可能です。
均一料金ですが、交通系ICカードは乗車時もタッチが必要。一方でVISA等のクレカタッチの場合、乗車時のタッチは必要ありません。
尚、Suica等全国交通系ICカードは、2025年4月に使えなくなります。交通系ICカードに関しては、「くまモンのICカード」のみ利用可能へ仕様変更です。
運転台のある両端車両は座席が少なめで、かなり開放感が目立ちます。
ベビーカーや車椅子スペースも設けられ、低床車両としてかなり利用しやすいです。
扉周辺にも、座席がキュッと詰め込まれていました。
連結部側には超コンパクトな、1席座席もあったり。
青いモケットが優先座席、運転席は階段を登った先のやや高い位置です。
運転台真後ろにも座席が設けられています。
こちらからの景色も、座ったまま十分に楽しめそうです。
車内表示器は液晶で、情報量がかなり充実しています。
英語・簡体字・繁体字・韓国語の4ヶ国語での案内です。
下車時は運転台真後ろの他、最後部車両からも下車できます。
このロープの内側に車掌さんが乗っておられ、スムーズな降車が可能。3両に対応していない停留場があるそうで、そのためかホームの確認等行なっている様子でした。
終点の田崎橋停留場に到着。
停留場手前100mから単線になっているのですが、7月にそのポイントで脱線事故が発生。2日ほど田崎橋停留場発着の電車が運休していました。
熊本市電では2024年に15件運行トラブルが発生しており、そのうち7件がインシデントに認定されたもの。新型車両導入時も、熊本市長が安全運行の重要性を挨拶で述べています。
こちらで折り返し、建軍町行きに乗車。
新型車両がどれだけ混雑を裁くのか、観察することにします。
車体側面の行先表示器は、かなり情報が充実。
途中の主要な停留所についても、案内されていました。
路面電車でよく見る、フラット型の連結部です。
座席が多くあるのは中間車両で、ここには逆に扉がありません。
路面電車のメーカーとして名高い、アルナ車両による製造です。
扉付近には防犯カメラも設置されました。
平日7〜9時台に関しては、最後部車両が女性優先車両となります。これまでは2両編成中1両が女性優先車両になっていたため、混雑の偏りに改善が見込まれます。
まもなく熊本駅前停留場。旧型車両では積み残しも発生していました。
車内ではJR各路線名まで、のりかえ案内されていました。
土休日の昼間ですが、先ほどと変わらず行列ができています。
ガラガラだった車内は乗客で埋め尽くされました。
一方で1両や2両では積み残しが発生していたのに、新型車両では完全にお客さんを乗せ切ることができています。
車両最後部へ来たので、運転台も見てみることに。
おそらく十分な空間が確保されていると思われます。
メーターは針式のものが残っていました。
ボタンの一つに「砂マキ」と書かれているので、路面凍結時など摩擦が足りない時、線路上に砂を自動的に撒いたりできるのでしょうか。
ブレーキ・マスコンは中央ではなく、右手側に設置されました。
熊本市電にはA系統とB系統の2種類があり、今回乗車しているのはA系統。
上熊本駅前から来たB系統の線路と合流し、辛島町停留場に到着。
今の所2400型車両が投入されているのは、A系統のみです。
各系統ののりかえ停留場が、辛島町停留場。
熊本市の中心市街地である、桜町の最寄り停留場です。
もちろん多くの方が下車されており、多少座席が空くくらいに。
一方で乗車する人も多く、熊本駅前出発直後ほどでは無いものの、それなりに混雑していました。
熊本市のシンボル的存在である、熊本城の東側を通過。
熊本城・市役所前停留場が最寄りです。
その後、水道町停留場で2400型車両同士すれ違いました。
現在投入されている全2編成が、ここに集まっています。
その真後ろには後続電車が迫っており、結構詰まっていたみたい。
熊本市電は辛島町停留場から水道町停留場にかけて、熊本市の中心商店街を囲むようにして走っています。
JR熊本駅・中心市街地・郊外住宅街の三拠点があって、それぞれを行き来する市電は混雑する訳です。
阿蘇から流れ出る白川を渡り、交通局前停留場に到着。
こちらで運転手さんが交代されました。
停留場出発直後に線路が分かれており、その先には車庫があります。
熊本市電は新水前寺駅前停留場に到着。JR豊肥本線との立体交差地点に設けられており、熊本市外から熊本市中心部へ向かう方は、ここで市電に乗り換えます。
朝夕には通勤通学のお客さんで非常に混雑し、特に朝はここから辛島町方面に乗ることが難しいほどだそう。
今回の新型車両導入に際し、地元メディアはデビューのことだけでなく、平日朝の混雑状況にまで密着していたほどです。
水前寺公園ではイベントか行われていたためか、座席も空くくらいに。
熊本商業高校で文化祭のような行事が行われており、こちらでの下車も多かったです。
平日でも多くの生徒さんが利用されているでしょう。
最後部車両の場合はここまで立ち入れるので、運賃収受箱の裏側に折りたたみ式の椅子が設けられています。
1席ずつ分かれており、自動的な跳ね上げ式です。
終点の健軍町停留場に到着です。
最後に中間車両も軽く見てみます。
この車両には完全に扉が無く、ロングシートが埋め尽くしています。
座席は6区画になっており、半分ごとにポールが立てられていました。
ボックスシートを全く設けないことで、定員を増やしています。
熊本市電での支払い方法は、
・現金
・全国共通ICカード(2025年4月廃止)
・くまモンのICカード
・JCB/VISA/AMEX/Diners/Discover/銀聯
・PayPay/Alipay/楽天Pay/auPAY/d払い 他海外QR
です。
車内にQRコードがあるのでこれを読み取って、支払うこともできます。
健軍町停留場ですぐ折り返し、熊本駅前方面へ戻っていきました。
朝には健軍町停留場にも行列ができ、始発なのに満員状態になるそう。
それだけ重要な幹線に位置づけられているのです。
新型車両は2025年度中に、さらに2編成導入予定とのこと。
路面電車が肯定的に見直されつつある現在、熊本市電にはより利便性の高い鉄道になってほしいです。
今回もご覧いただき、ありがとうございました。