函館から札幌を結ぶ特急北斗が走るルートを海線と呼ぶのに対し、長万部駅から倶知安を経由するルートは山線と呼ばれます。
2030年札幌延伸予定の北海道新幹線はこちらのルートを走り、並行在来線に指定された山線の長万部〜小樽は、廃線が決まっています。
ここで1日1往復、札幌〜倶知安・蘭越を結んでいるのが快速ニセコライナー。小樽駅での乗り換えが不要で、札幌近郊への通勤通学需要を拾っています。
そのうち朝の1本、蘭越駅始発の快速ニセコライナーを乗り通してみます。
蘭越駅周辺にはほとんど宿が無く、倶知安から折り返し乗車することも不可能。乗り通しのハードルが異常に高い快速列車です。
路線自体が廃線になるため、この快速も当然廃止サれることに。とてつもなく乗り通しづらい快速を全区間乗ってみました。
蘭越駅から少し離れたところに民宿、外国人向けのゲストハウスなどがあるみたいですが、今回はそれらを使いません。
早朝4時台から車を出していただき、札幌から蘭越へ向かうことにしました。
現在、後志自動車道が来ているのは余市まで。2024年度には仁木IC、2025年度には共和IC、さらに倶知安ICまで建設が進められます。
一般道へ降りまして、倶知安町、ニセコ町を経由して蘭越町に入ります。
朝6時前、蘭越駅に到着しました。
まだ列車は来ておらず、駅舎内の待合所には1人鉄道ファンの方がいらっしゃるのみです。
札を掛けるタイプの超シンプルな発車標、快速札幌行も用意されています。
1日7本運行している小樽方面の列車。
しっかりニセコライナーと書かれていまして、小樽から快速と付記。それまでは各駅に停車します。
6:10、倶知安駅から回送列車として入線しました。
札幌駅17:42/倶知安19:52着の快速ニセコライナーとして倶知安駅まで来て、夜間滞泊ののち蘭越駅から折り返すという運用です。
簡易委託駅できっぷうりばも営業しており、乗車券の販売等行われています。
コンクリート造りの駅舎、町の中心駅にふさわしい規模感です。
使用されているのは、1997年に運用開始した201系気動車です。
札幌圏の通勤輸送改善を目的として導入され、「すべてにおいて『電車と同じ』を追求」しています。
当時気動車の性能や輸送力が電車に劣っており、山線から小樽〜札幌直通列車が周りの電車にとって障害になっていました。
山線から小樽〜札幌の利用者のうち4割が札幌駅やそれより遠くまで利用しており、当時2往復あった直通列車の利用者も多かったことから、通勤電車と同性能の201系気動車が製造されたのです。
現在では蘭越駅に来る列車のほとんどがH100形気動車、201系気動車が来るのは非常に珍しくなりました。
1日1往復だけの運行ですが、行先方向幕にも種別として『快速ニセコライナー』が入っています。
車内表示器にもニセコライナーとして、停車駅などが流れていました。
6:16 蘭越駅 発
定刻通りに蘭越駅を出発します。
他にお客さんは鉄道ファン1人だけ、まさか同業者がいるとは思いませんでした。
雨雲が多く暗いですが、手前側の山を見られます。
あっという間に山の中へ入って行き、一気に「山線」の愛称に相応しい車窓です。
ニセコライナー201系気動車の車内を見てみましょう。
全てロングシートになっていまして、札幌近郊の函館本線でも運用に就きます。
ドア付近には補助席も用意されていますが、特に混雑時ロックがかかることは無さそうです。
北海道では通勤電車でも、車内にゴミ箱も備わっています。
また寒冷地仕様として、車内保温のためにも反自動ドアが採用されていました。
お隣の昆布駅からは1人、高校生らしき方が乗車されました。
昆布駅には隣接して幽泉閣という宿泊施設があるので、泊まることもできます。
雲に隠れてしまっていましたが、山の隙間からニセコアンヌプリの裾野を見ることもできました。冬の夜であればスキー場の明かりもキラキラ輝いています。
再び山を越えまして、まもなくニセコ駅。
ここには転車台や蒸気機関車が残っており、建屋の中には2017年に引退したニセコエクスプレスも保存されています。
ニセコ駅からは5人乗車、地元の年配の方々にとって重要な足です。
コテージのようなデザインの駅舎でして、別荘地の玄関口みたいなデザイン性がなんとも素敵。
ここでしばらく停車しまして、普通列車長万部行きと行き違いました。
この列車はワンマン列車ではないので、車掌さんが車内できっぷを販売されています。
運転台の表示盤には、ニセコライナーと書かれていました。
駅舎に泊まれることで有名な、比羅夫駅に到着。おそらく宿泊なさっていた方が外へ出て写真を撮っていらっしゃいました。
進行方向左手には大きな羊蹄山、蝦夷富士とも呼ばれるふっくらした三角形です。
まもなく倶知安駅に到着。
ここには北海道新幹線の駅も設置されるため、駅周辺では工事が進んでいます。
かつては駅舎の近くにホームがあったのですが、新幹線駅建設工事のため、少しずれた位置の仮ホームへ移設されました。
こちらがその仮ホーム。1番線は行き止まりのため倶知安発着の列車のみ、長万部・蘭越から来る列車は2番線に停まります。
ここで4分ほどの停車。
やはり倶知安からの利用者は多く、14人乗られました。この時点で車内には21人いらっしゃいます。
ここ2,3年で工事が本格化しており、2030年度開業を目指す北海道新幹線札幌延伸も非常に楽しみです。
倶知安町から共和町に入りました。
共和町の中心部からは外れていますが、町で唯一の小沢駅からは2人乗車。
帰省した大学生っぽい方もいらっしゃいました。
かつて小沢駅からは国鉄岩内線が分岐しており、共和町中心部を通って岩内駅へ至りました。1985年に廃止され、積丹半島から鉄道が無くなっています。
1904年に開通した稲穂トンネルへ、当時そのそのお祝いとしてお餅が売り出されていました。
小沢駅近くの伯洋軒 末次商店ではトンネル餅が売られていて、これは稲穂トンネル開通が由来です。2022年6月に閉店し、その歴史に幕を下ろしています。
山を登り切ったところ、銀山駅で反対方向の普通列車倶知安行きと行き違い。
基本的に国道が並行する山線ですが、銀山駅周辺の集落は少々外れています。ここからは1人乗車されました。
然別駅でも1人乗車。小樽から見て峠手前、然別止まりの普通列車も設定されています。
山を越えた仁木駅からは高校生を中心に、8人乗車されました。
この辺りはりんごが名産となっており、果物の木が並ぶ中を突っ切って行きます。
そして山線の中でも主要な駅、余市駅に到着です。
相変わらず大勢の方の乗車、少なくとも30人は乗ってこられます。
その他、5人ほど下車された方もいらっしゃいました。余市町内にも何校か高校があります。
ここで普通列車然別行きと行き違いました。
この通り多くの利用者がいる余市駅。北海道新幹線開業後も、余市〜小樽は鉄道での維持を求める声が大きくなっています。しかし、結局鉄道を残すことは困難になってしまい、余市〜小樽含め廃止の声明が出されました。
日本海に接するところまで至り、列車は90km/h超の速度を出して走って行きます。
早くも小樽市に入りました。
蘭島駅で4人乗車。余市駅の利用者が多い一方で、小樽まで途中駅からの利用者がやや少なく、鉄道を存続しても小樽市の受益が少ないことが問題の一つでした。
蘭島駅を過ぎるとクネクネしたカーブの連続。トンネルもいくつかあって、なんとか勾配を緩和しつつ山を越えます。
塩谷駅で1人乗車。線路が通る場所の位置関係もあって、塩谷の集落からやや奥まったところにあります。
小樽市中心部まで来まして、これまでと比べて明らかに街の規模感が大きいです。道路交通を阻害しないよう、少し高いところを走っています。
8:01 小樽駅 着
小樽駅では17分間の停車時間があります。快速を名乗ってはいますが、かなり長い停車です。
余市から乗車された高校生の生徒さんは、小樽の高校へ通われます。小樽駅で結構お客さんが入れ替わっており、停車時間があってもそんなに問題無いのでしょう。
快速ニセコライナーが出発する前に、普通列車岩見沢行きが発車します。
札幌駅に先に到着するのは快速列車ですが、手稲駅までは普通列車の方が先着です。
快速ニセコライナーが到着したことで、行き違うようにして普通列車倶知安行きが出発しました。1両編成のH100形気動車には、立ち客が数人いらっしゃる程度です。
それに続いて5番線ホームから出発する、普通列車岩見沢行きを見送りました。
小樽駅は1934年に建てられたレトロな駅舎。上野駅をモデルにしており、かなり見慣れた外観です。
駅前には北海道中央バス小樽ターミナルがあります。
倶知安、ニセコ、余市など山線沿線の町へ向かうバスが発着しているほか、積丹方面へも結ぶターミナルです。
この時間帯は快速エアポートが小樽まで来ていないため、小樽から札幌へ行くにはこれが1番早いです。停車駅は同じく、南小樽,小樽築港,手稲,琴似,札幌です。
8:18 小樽駅 発
札幌駅到着は8:57で出社にしては少々遅いですが、立ち客が数名出るくらいのお客さんがいらっしゃいました。
1997年の201系導入当時は山線から札幌駅へ直通列車利用者も多かったようですが、現在では小樽駅でかなり入れ替わっています。
小樽市はニシン漁や産業港で栄えたまち。北海道最初の鉄道である手宮線が港から伸びており、南小樽駅手前で合流していました。
南小樽駅から南西3.5kmのところには、北海道新幹線新小樽駅が設置されます。
お隣の南小樽駅に到着。
この列車は函館本線普通列車の6両編成より短い、3両編成での運行です。そのためホーム端に並んでおられる方もいらっしゃって、慌ててこちらへ駆け寄ってきます。
南小樽駅の近くには小樽フェリーターミナルがあって、舞鶴や新潟へ新日本海フェリーが就航しています。
次の小樽築港駅にもたくさんお客さんが並んでおられて、満員電車とは言いませんが、結構な立ち客が出ている状態です。
ここまで各駅に停車していましたが、小樽築港駅より駅を通過し続けます。本格的な快速列車としての運行です。
断崖絶壁の日本海沿いを走っており、非常に綺麗な海を長時間見せてくれました。
速度は80km/hほど。忘れかけていましたがこの列車はディーゼル車両で、かなり頑張って走っています。
かつては張碓駅というのがあって、海水浴客が多く利用していたようです。
日本一の秘境駅と言われており、線路を渡って外へ出る必要があったため、人身事故が多かったそう。
今でも札幌近郊の海水浴場があることで知られる、銭函駅を通過しました。
小樽駅から電化区間で、架線の下を走っているディーゼル車。100km/h超で札幌市内を走ります。
一軒家がずらっと立ち並ぶ街を抜け、手稲の札幌運転所横を通過。
なんと北海道で特別運行している、伊豆急ロイヤルエクスプレスが止まっていました。ここには函館や釧路への261系特急形気動車がいて、札幌駅への送り込みを兼ねて、手稲駅〜札幌駅のホームライナーが運行されています。
手稲駅には小樽駅を先に出発していた、普通列車岩見沢行きがいました。手稲駅で追い抜くことになります。
手稲区の中心駅となっています、手稲駅を出発しました。
ここからは前に列車が詰まっているのか、40km/h程の低速で走っています。
地下鉄東西線が走るエリアに入りまして、発寒中央駅をゆっくり通過
高架を登って行きますが、明らかに線路が付け替えられたことが分かる形です。
琴似駅に到着しました。
手稲駅・琴似駅からはかなりお客さんが乗ってこられており、短い3両編成では満員電車状態です。4分後に手稲駅で追い抜いた普通列車が設定されているのは、かなり重要に思います。
学園都市線が分岐する桑園駅を通過しまして、終点札幌到着の放送が流れました。
前面を見ていると、プラットホームがたくさん用意されているのが分かります。北海道の鉄路の核を成す、北の大ターミナルの規模感は伊達ではありません。
8:57 札幌駅 着
札幌駅に到着しますと、9:00発の特急カムイ旭川行きが出発。
さらに向こう側からも快速エアポートが同時出発となっており、函館本線と千歳線で並走することになります。
ニセコライナーからどちらにも乗り継ぐことができるようです。
9:03、201系気動車は苗穂の車両基地へ向けて、回送されて行きました。
蘭島駅から乗り通すのは非常に困難ですが、山線における唯一の特別な定期列車。路線廃止前にぜひ一度乗ってみてください。
今回もご覧いただき、ありがとうございました。
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