2022年3月16日の夜、福島県沖で大きな地震が発生しました。
東北新幹線では福島〜白石蔵王にて脱線事故が起きるなど、大きな被害が出ています。
これによって那須塩原〜盛岡は運転再開の見込みが立っていません。
また、翌日17日朝の時点では、東北地方ほとんどの在来線が動いていない状態でした。
関東から北海道へ鉄路で行く予定だったのですが、簡単には行けなくなってしまいました。
そこでやってきましたのは、浅草駅です。
JRが動かないなら私鉄を使えばいいじゃないという発想です。
発車標の一番上にはかなり細かい文字ですが、『リバティ会津・リバティけごん』と表示されています。
この特急列車は会津田島まで行き、その先東北地方まで結ばれているのです。
浅草〜会津田島の特急料金は2160円、上野〜会津若松までの運賃は4770円となっています。
東武鉄道では特急列車に乗車する時、乗車前に特急券の検札があります。
切符を見せてホームに入ると、今回乗車するリバティが停車中でした。
鉄仮面と呼ばれる300系新幹線に似た、非常にかっこいい顔をしています。
この列車は6両編成で、3両と3両を繋いで編成されます。
後ろ3両の方向幕を見てみると、『特急けごん 東武日光』と表示されています。
そして前3両の方は『特急リバティ会津 会津田島』です。今回はこちらの方に乗車します。
浅草駅のホームは非常にカーブがきつく、列車とホームの間が広く開いています。
そのため落ちてしまわないよう、板で橋渡されていました。
車内はご覧の通り。伝統的な江戸紫と呼ばれる座席が並んでいます。
天井はひょうたんが連続するように切り抜かれており、間接照明が非常におしゃれでした。
14:30、浅草駅を出発しました。
駅ホームから続くきついカーブを、キーキー音を立てながら走り出していきます。
駅を出るとすぐに隅田川を渡りました。
そして左手には、東京スカイツリーが見えてきます。
次の東京スカイツリー駅はその足元にあり、本当に真上を見上げるようです。
鐘ヶ淵駅では真ん中の通過線を走っていきますが、ものすごくノロノロ運転。せっかくの通過線なのに分岐が幹の方ではなく、枝の方で速度制限を受けているのです。
北千住駅に到着。
JR常磐線との乗換駅です。常磐線では駅設備や橋に被害が出ており、特急ひたちはいわき〜仙台が動いていません。
これで都内の各駅に停車し終えましたので、停車駅の案内が放送されます。
東京拘置所をバックに、東武に乗り入れる東京メトロが走っていきました。
こちら座席についても見てみましょう。
背面テーブルはノートパソコンを置くのにちょっとキチキチくらいのサイズです。
フットレストはありませんが、座席下へ足を十分伸ばせます。
座席の横部分にはコンセントが付いています。長時間の乗車なので非常にありがたいですね。
また、インアームテーブルもあるので、簡単なものを置けるようになっていました。
春日部駅に到着しました。
電光掲示板には、出口は反対側と書かれています。
この先へ進んで降りようと思っても、扉は開きません。開くのは2号車、5号車だけです。
春日部市と言ったらクレヨンしんちゃんの街としても知られています。
この先、通過する栗橋駅は東北本線との乗り換え駅です。ちょうどJRが東京方面へ走っていくところでした。
北関東への境界線、利根川の河川敷には菜の花が咲いていました。もう春がやってきましたね。
しばらく眠ってしまっており、新鹿沼駅で目を覚ましました。
車内では国道119号線沿いに続く日光杉並木道について放送がかかります。
35kmも続くその長さは世界一の並木道としてギネスブックにも登録されているそうです。
列車もそれに似たところを通ってくれるので、その雰囲気を感じ取れました。
列車はまもなく下今市駅に到着します。
特急リバティはここで東武日光行きと会津田島行きに分かれて運転します。
下今市〜鬼怒川温泉ではSL大樹が走ります。下今市駅には転車台や車庫などが設置されており、その様子を楽しむことも可能です。
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連結が解除されまして、それを繋いでいた幌が収納されていきます。
ここではしばらく停車するので、飲み物を買うこともできます。
ここからはそれぞれ3両編成での運転です。
ちょうどDL大樹が向かいから到着してきました。
現在SLではなくディーゼル機関車による運行となっています。
それではリバティ会津・会津田島行きから先の発車です。
大谷向駅では、東武鉄道へ乗り入れるJR特急きぬがわと行き違います。
下今市駅から先は単線になっているのです。
そして鬼怒川温泉駅に到着しました。
SLや都内からの特急の終点ですから、非常に大きな構内です。
ここを出発すると、鬼怒川の向こうには温泉旅館がたくさん立ち並びます。
一方で廃墟と化したホテルや旅館も多く、かなり廃れてしまった感じがありました。
新藤原駅で東武鉄道は終わりまして、ここからは野岩鉄道に入ります。
駅名標も野岩鉄道のものが掲げられています。
野岩鉄道に入ると東武から一転、トンネルが一気に増えてきました。中にはトンネル内の湯西川温泉駅なんてのもあります。
電光掲示板には野岩鉄道のマークが付けられました。
この辺りは温泉郷が多く、線路が橋を渡る高いところから見下ろすこともできます。
川を渡っていますと、その僅かな河川敷には雪が見えてきました。
こちらは上三依塩原温泉口駅。
自動放送でペラペラ喋られても字が思い浮かびません(笑)
野岩鉄道で一番の秘境駅としても知られる、男鹿高原駅は通過します。
近くには緊急ヘリポートもあるそうです。
その後のトンネルで栃木県から福島県に入りまして、山中では雪も深くなってきました。
とは言っても会津にしては大分減ってしまった印象です。
会津高原尾瀬口駅では転車台が雪に埋もれていました。
ここからは野岩鉄道より会津鉄道に入ります。
この特急リバティは3つの鉄道列車を渡る列車なのです。
17:42、終点の会津田島駅に到着しました。
駅には会津鉄道の色々ラッピングされた列車がたくさん停まっています。
電光掲示板には会津鉄道のロゴマークが表示されていました。
3時間12分の特急の旅はここで終わりです。
ここから先は会津鉄道の普通列車に乗り換えます。
構内踏切を渡ると、カラフルな列車たちが集まっていることが分かりました。
こちらは特急リバティから乗り継ぐことができる、会津若松行きのリバティリレー号。
普通列車とはいっても、リクライニングシートの並ぶ豪華仕様です。
背面テーブルまで備えられていて、特急列車さながら。
座席を回して向かい合わせにしても、飲み物くらいを置ける細長いテーブルがあります。
5分の乗り継ぎで17:47、会津田島駅を発車しました。
ここからはどんどんと暗くなってしまいます。
大川ダム公園は会津鉄道で一番の秘境駅、その周りは本当に真っ暗です。
一度訪れたことはありますが、本当に公園とダムがあるぐらいだったのを覚えています。
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会津鉄道内でも主要な観光地となっている芦ノ牧温泉駅。ここにはねこ駅長がいて、4匹の猫が働いてくれています。
また、芦ノ牧温泉の大川荘は鬼滅の刃の無限城の聖地としても知られる場所です。
会津鉄道の終点、西若松駅に到着しました。
ここからはJR東日本只見線です。
只見線と言うとものすごいローカル線を思い浮かべてしまいますが、西若松〜会津若松は街の中を走ります。
ホームには見慣れたJRの案内サインが戻ってきて、なんだか帰ってきた感がありますね。
お客さんは会津若松まで行くことはなく、ここで大勢降りていかれました。
七日町駅の近くには、レトロな町並みで知られる七日町通りがあります。
そして18:55、終点の会津若松駅に到着しました。
浅草〜会津若松までは全行程4時間25分。
普通列車も入ったローカル線も含んだ割には割と早く、非常に面白い旅路になりました。
さて、ここからは郡山への磐越西線も復旧していました。東北本線の代替ルートとしては完成していた訳です。
これに乗って北上しても良いと思ったのですが、今回は予定を変更して違う方法で行くことにしました。
JRが停まっている中、地震の被害が無かった山ルートがあるおかげでここまで進められました。
色んな鉄道ルートがあって、本当に助かったと思います。
今回もご覧いただき、ありがとうございました。