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【無計画すぎて6年で2回駅名変更】出雲大社の観光客を混乱させた出雲大社口駅・出雲神西駅とは?

県庁所在地の松江市に次いで、島根県第二の都市である出雲市。

その中心駅はここ出雲市駅です。岡山からの特急やくもが1時間に1本間隔で発着し、東京からは寝台特急サンライズ出雲号が来ます。

 

何と言っても出雲大社が有名で、その玄関口。特徴的な大屋根には、神話の世界が広がっていました。

 

出雲大社へのアクセスには、出雲市から路線バスやレンタサイクル。鉄道なら一畑電鉄に乗り換えて出雲大社前駅が便利です。

 

しかし、かつてJR山陰本線には「出雲大社口駅」という、いかにも出雲大社へ行くのに便利そうな駅がありました。

ところが、その駅名が使われたのはわずか6年間。短期間で駅名が消えてしまった謎を探ってみましょう。



普通列車に乗り込みまして、出雲市駅を出発しました。

1998年に高架化され、周辺の連続立体交差が完了。高架下には様々なお店が入っています。

 

山陰本線はお隣の西出雲駅まで電化されています。

 

これは西出雲駅近くに車両基地があって、特急やくもや寝台特急サンライズを回送するためです。

 

出雲市駅から2駅お隣、今回の目的地である出雲神西駅に到着しました。



現在の駅名は出雲神西いずもじんざい駅です。

何の変哲もない1面1線の棒線駅。しかし、この駅こそ「出雲大社口」を名乗っていた駅です。

 

階段を降りた先には、結構新しそうな待合室があります。お手洗いも備えていて、小さな駅にしては充実しています。

 

駅舎を見てみますと、出雲大社を連想させる特徴的な屋根です。 たしかにこの駅はれっきとした、出雲大社のJR最寄り駅。しかし、直線距離では9kmもあり、利便性を考えたらとても最寄り駅とは言えません。



この駅が出雲大社口駅を名乗るようになった理由、それには出雲大社周辺の鉄道の歴史が絡んでいます。

(地理院地図を改変)

特急列車が走る山陰本線と、地方私鉄の役割をする一畑電鉄。これに加えて出雲市駅から国鉄大社線が伸びていました。

 

現在は修復工事中ですが、終点の大社駅は重要文化財にも指定されています。駅舎が重要文化財に指定されている門司港駅・東京駅に対し、こちらは和風建築というのが特徴的です。

 

時刻表によると、出雲市駅まで1時間に1本。

名古屋〜大社駅の急行大社、大阪〜大社駅の急行だいせんなど、長距離の直通列車も来ていたそうです。

 

駅舎外には臨時改札と思われるラッチがズラッと並んでおり、その需要を伺い知ることができます。

 

現在でも残っていておかしくなさそうに思う大社線ですが、国鉄分割民営化の時に特定地方交通線に指定、1990年に廃止されました。これが山陰本線の支線扱いだったら残っていたでしょうが、路線別で輸送密度を測っていたため、仕方ありません。

 

(地理院地図を改変)

大社線廃止に伴い、国鉄を継ぐJRの駅名から「大社」の字が消えることに、危機感を覚えた自治体。

出雲市と大社町(当時)が神西駅の駅名変更を要望し、1993年3月に駅名を「出雲大社口駅」に改称しました。観光振興を目的とした駅名改称、掛かった費用1500万円は出雲市が負担しています。

当時問題になっていたのが、地方財政再建促進特別措置法が国や公社、公団に対する負担金の支出や財政の寄付を原則禁止にしていたこと。自治省は、駅舎改築に対しての負担は良いが、駅名変更に対しては不可でした。

同じ時期に北鹿島駅から駅名を変更した鹿島サッカースタジアム駅では、駅舎建設と駅名変更を一体に行えば、自治省に認められていました。出雲神西駅もこのケースを受けて、待合室建設と駅名変更を自治体負担で行ったと考えられます。



晴れて出雲大社口駅の駅名を手に入れた訳ですが、 ここからが問題に。

さすがに自治体も出雲大社口駅から9kmも歩かせることは考えておらず、出雲大社へのバス路線やタクシーを確保することにしていました。

 

出雲市とJR西日本米子支社の間では、出雲市が出雲大社までのバス路線を開設し、案内板や駅前広場の整備を進めるという約束があったのです。

出雲市は1996年度に5,500万円かけて、駅舎建替と案内板設置、25台の駐車場整備を行いました。

 

しかし、出雲大社へのバス路線新設は見合わせに。

出雲大社口駅には1日31本の列車が停車し、1996年度の乗客は36人/日。出雲市は路線バスを5往復に絞っても、1日72人利用しなければ採算が合わないと説明しました。

 

また、タクシーの場合でも出雲大社まで2,600円。出雲市駅から一畑電車を利用した場合より2,000円ほど高く、出雲大社口駅を利用する意味が無かったのです。

 

1997年5月には中国四国管区行政監察局が「出雲大社の最寄り駅だと思って列車を降りて困った」という出雲大社を訪れた東京の観光客から苦情を受けます。

監察局はJR西日本に対し、駅名変更かバス路線開設、車内放送の徹底を申し入れました。その後JRは車内放送で、出雲大社への最寄り駅として出雲市駅までの利用を案内するように。

出典元とされる中国新聞の記事は確認できませんでしたが、Wikipediaには地元住民がマイカーで送迎するというケースもあったと記載されていました。

 

(地理院地図を改変)

その後バス新設など、出雲大社の玄関口になる見込みがないため、1999年春に「出雲神西駅」へ再改称しました。元々の神西駅名に「出雲」が冠されています。

このときの改称費用は約2580万円、約1200万円を出雲市が負担しました。



車両基地の位置が出雲神西駅よりも西側であれば、特急やくもを出雲大社口行きにして、観光地の玄関口に成り上がらさせることもできたと思います。

駅名を変える前に利用予測を十分にすれば、このような混乱は無かったでしょう。

 

みなさんも、駅名を変えたい時は慎重に。

 

今回もご覧いただき、ありがとうございました。

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