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【冬眠する路線】雪に埋もれた木次線が面白すぎる!代行バスで奥出雲おろちループへ[史上最長片道切符の旅(34)]

2022年6月20日

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今回のルート

出雲市〜備中神代

 

おはようございます。神様の集う縁結びの町、出雲市の朝です。

 

出雲大社を思わせる大屋根は、内部も凝ったデザインになっています。

 

1051 出雲市駅 発

午前中とは言っても結構遅めの出発です。それは、これから向かう路線の本数があまりにも少なく、早くに出発しても意味がないから。

 

1109 宍道駅 着

島根県東部に位置する全国7番目の広さの湖、宍道湖が近くにある宍道駅で下車しました。

 

この駅にはJR西日本のクルーズトレイン、トワイライトエクスプレス瑞風も停車します。

さて、これから乗車するのは木次線です。

かつて広島県と島根県を結ぶ、急行ちどりが走る陰陽連絡線として活躍していました。現在では完全にローカル線となっており、乗換案内のようにこれで広島に行くのは鉄道ファンくらいでしょう。

 

さて、この列車は備後落合行きとされていますが、備後落合駅までは行きません。

 

これは出雲横田~備後落合は除雪が行われず、代行バスによる運行になるからです。

 

今回はその代行バスに乗って、列車の来ない冬の木次線を見てみることにします。

1127 宍道駅 発

2両編成の列車には15人程を載せて出発しました。

 

廃止された4,5番線ホームに、木次線の0キロポストが立てられています。

 

次の南宍道駅のホームは10‰の勾配上に位置しており、傾いているのが分かります。

 

山陰地方と言ってイメージするような、のどかな景色の中を走行し始めました。

 

加茂中駅は列車交換が可能な1面2線構造。

駅の北西に事代主神が祭られる加茂神社があります。因幡の白兎でウサギを助けた大国主命の子です。

 

ホームから降りたところにある大きな駅舎では、簡易委託による乗車券の販売もされています。

 

出雲大東駅の駅舎は2007年に新しくなり、「珈琲と麺の店ふぁ~すと」や、郵便局などが入居しています。

雲南市立病院も近くにあり、木次線内で最も利用者が多い駅です。



まもなく路線名にもなっています、木次駅に到着。

ショッピングセンター・マルシェリーズが横に見えまして、雲南市の中心的立ち位置にあることが分かります。

 

ここで宍道行きの普通列車と行き違い。

ベージュ地に黄桃色と抹茶色の帯を巻いており、出雲市の神話的イメージを与えてくれます。

 

昔ながらの駅舎を残す日登駅、小さな展示場と称してショーウィンドウが作られていました。

 

列車は線路を傷めないようにするため、25km/hで走っていきます。これによって線路の保守費用を抑えているのです。

 

出雲横田から先で積雪のため代行バスとのことですが、やっと雪が現れ始めたところ。ここまで暖かく感じる程でした。

 

しかし、トンネルを抜けて日陰に入れば、いきなり一面の雪です。

 

下久野駅は住民グループ「花ももステーション」に酔って管理されています。

駅舎とホームの間にある線路の跡地を畑として利用し、駅ナカ農園として野菜を栽培。確かに黒いビニールが敷かれており、畑であることが分かります。

 

この非常に長いプラットホーム、かつては長編成の列車が来ていたのだという過去を思わされます。

 

山を登った先では下久野トンネルへ、全長2241mは木次線最長です。

 

トンネルを抜けた先では、素晴らしい雪原が広がる中をカーブで駆け抜けていきました。ローカル線に乗っていて一番楽しい光景かもしれません。



雲南市から奥出雲町に入っています。

出雲八代駅は常備券販売が行われる駅。

また、映画『砂の器』のロケ地で、ホームが亀嵩駅として使われました。

 

ここもまた1面2線構造で、長編成の列車が交換可能だったことが分かります。

 

ここで雪に敷かれた2筋のレールは下るようになります。中国山地はまだ先ですが、一部分を切り取れば地形に合わせて下ることも。



出雲三成駅は新しめの駅です。

駅舎内には仁多特産市という特産品販売所が入居していて、奥出雲おろち号停車中には買い物客で賑わっていました。

 

右手に見えてきたのは島根県営三成発電所。

上流にある三成ダムから水路トンネルを通って、ここまで流れているのです。

 

川沿いのカーブを走り始め、このように窓を開けて汽車の旅をするのは溜まりません。

 

山の中へ入ると、列車のすぐ真横に雪が迫っています。

 

動物の足跡なんかも付いていて、とても可愛らしいものです。



亀嵩駅と言えば、駅舎に蕎麦屋さんがあることで有名な駅。

蕎麦屋『扇屋』さんが乗車券の販売をしており、特に奥出雲おろち号で予約販売される亀嵩駅そば弁当はとても美味しいです。

 

ここで、出雲横田駅より先に行く場合は、車掌さんに申し出るよう放送が流れました。

 

各座席にいらっしゃった時に、備後落合駅まで行くことを申し出ます。

 

山中でなくても雪が積もるようになりまして、標高が高くなっていることが分かります。



出雲横田駅着

列車の終点に到着しました。入母屋造の屋根であり、格式高さを感じさせられます。

 

雪が積もる冬季、列車が走るのはここ出雲横田駅までです。

 

一見ここから先も行けそうに見えますが、大人しくバスに乗り込みましょう。

 

使用されるのはマイクロバス。

出雲横田駅で5人ほどバスを待たれていましたが、下車駅ごとにバスが分かれているようで、備後落合駅まで行くのは僕1人だけでした。

 

立派なしめ縄が掛けられた出雲横田駅を出発します。

 

JR西日本が発表した輸送密度2000人/日未満の線区は、木次線では出雲横田駅で分けられています。

宍道〜出雲横田が277の一方、出雲横田〜備後落合は37。

明らかに後者を廃止したいというのがひしひしと感じられます。

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しかも、自家用車での運転が不安で公共交通が重要視されやすい雪の降る冬季にバスで補えているのですから、生活利用だけなら全く問題ないはずです…。

 

八川駅もまた亀嵩駅と並んで、トロッコそば弁当で有名な駅。

 

店舗は駅舎内ではなく駅前にあって、舞茸の入った蕎麦が人気だそうです。

 

しばらく雪が積もっている横を走っているなと思っていましたが、踏切が現れてここが線路だということを認識させられます。線路は雪で包まれていたのです。

 

山の中へと入っていきまして、左側の線路が降りて来ました。



出雲坂根駅では鉄道ダイヤと合わせるため、25分もの停車時間があります。

運転士さんから外に見てきていいよと言われました。

 

ホーム入るとビックリ!線路はドッサリ雪で埋められていました。

 

完全にホームの高さまで来ており、BRTのホームを自然が作っちゃったみたいな感じ。

 

駅舎も足元が埋もれてしまっているようです。

 

おそらく除雪車を走らせれば運行できるのでしょうが、それに見合うだけの乗客はいません。

出雲横田〜備後落合の営業係数6666.7が芸備線の備後落合〜東城25000.0より良いのは、冬季に鉄道より経費のかからないバス運行にしているおかげという可能性もあります。



木次線と言えば、三段スイッチバックが一番の目玉です。

出雲坂根駅はそれが行われる駅。

これを楽しむには列車が走る、雪の降らない時季に行くしかありません。

 

木次方面から来た列車はまず出雲坂根駅のホームへ。

 

今度は進行方向を変えて引込線に入ります。

引込線のポイント部分には雪が詰まるのを防ぐスノーシェッドが掛けられているのですが、列車が走らないのでもはや関係ありません。

 

再び進行方向を変え、ホームよりもっと上にある線路を通って、備後落合駅方面の山に挑むのです。

 

道路を挟んだ先には延命水という湧き水があります。

寿命100年超と思われる古狸が好んで飲んでいたことから、長寿の霊水として人々も飲むようになったとされています。



出雲坂根駅の見学も終わったところで、そろそろ出発の時間です。

ちなみにここから先バスには誰一人として乗ってきません。

 

冬の木次線では三段スイッチバックと奥出雲おろちループという二つの見どころを見られません。

しかし、代行バスであれば奥出雲おろちループを走ることができます。

 

奥出雲おろちループは11本の橋と3本のトンネルからなる、日本最大規模の二重ループ方式道路です。

 

左側にはスイッチバックを終えた後の木次線を見ることができます。

 

木次線から見た奥出雲おろちループはご覧の通り。

きれいな円を描いており、山の上には道の駅や美術館が見られます。



島根県最後の駅となる、三井野原駅に向かいます。

ここはかつてスキー場として賑わったそうですが、現在では旅館も無くなってしまったとのことです。

 

トロッコ列車の奥出雲おろち号は団体ツアーが多くあるのですが、ここ三井野原駅から大型バスで観光地へ向かうというルートが設定されています。

 

木次線沿いの国道314号で山の中を駆け抜けていきます。



島根県から広島県に入りました。

広島県最北の駅で木次線唯一の単独駅、油木駅です。

 

葉っぱの消えた冬の林には、自然に身を任せて冬眠する木次線の鉄橋がいました。

 

一旦離れた木次線ですが、小鳥原川橋梁の下をくぐります。

 

そして終点の備後落合駅に到着しました。



1433 備後落合駅 着

バスは駅前に乗り付けまして、ここで終了。

 

備後落合駅は、広島支社、岡山支社、米子支社の境界駅です。そのため、すべての列車が備後落合行きとして運行されています。

14時台は全ての列車が集まり、1日の中で唯一乗り換えが便利な時間帯です。

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本来なら向こうの1番線ホームに木次線の列車が停まっているはず。しかし何度も言う通り、バスによる運行なので列車は停まっていません。



1437 備後落合駅 発

ここからは新見行きの普通列車に乗車。備後落合〜東城は100円稼ぐのに25000円必要な区間です。

 

1両の車内には12,3人ほどいらっしゃって、5人位は生活利用者に見受けられました。

 

次の道後山駅には芸備線利用促進ののぼりが立っています。駅舎も立派ですが、この駅の1日あたり利用者数は0人。

高尾原スキー場があって賑わっていたそうですが、現在はゲレンデ跡だけが残ってます。

 

列車は成羽川沿いをゆっくりゆっくり走行。

 

100円稼ぐのに25000円必要な区間は、東城駅で終了となります。

 

この区間の輸送密度は11人/日ですが、昼間でも生活利用者らしき方が降りられました。

 

広島県から岡山県に入りまして、野馳駅に到着。1930年開業当時からの駅舎が残ります。

 

広島駅から159.1km続く芸備線は備中神代駅で終わりまして、ここから伯備線に入ります。

 

ルートとしてはここから北上して米子方面なのですが、もう少し先へ行くことにします。

 

今回もご覧いただき、ありがとうございました。

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