JR北海道は2021年度第2四半期の、線区別収支と利用状況について発表しました。
ここでは4月〜9月の6ヶ月間の実績について提示しています。
全体的な営業損失は358.98億円で、24.32億円の減少です。通勤通学や空港アクセスの利用が戻り、営業損失の減少幅は札幌圏の16.59億円が大部分を占めています。
2020年度は新型コロナウイルスの影響で、極端に利用者が減少しました。それに比べれば回復の傾向が見られます。
ただし、コロナ以前の2019年度と比べると、営業損失は140.67億円の拡大。依然として厳しい状況であることに変わりはありません。
札幌圏4線区
2020年に比べて利用者が増加し、営業収益は777百万円の向上を見せています。
また、営業費用についても照明設備の修繕費・車両の減価償却費の減少で、882百万減です。
営業費用について注目してみると、利用者が減っても、ほとんど出費を抑えられていないことが分かります。大量輸送でなければ儲けられないという、鉄道運営のシステムが表れています。
北海道新幹線
営業収益は115百万円増加した一方、営業費用は線路修繕の増加で462百万円拡大しています。
何よりも収益に対する営業費用が高く、収益率が非常に悪いです。
何とか札幌延伸が予定されている2030年まで持ち堪えてもらい、それから黒字路線に転換するしかありません。
続きまして、ローカル線です。
赤線区(輸送密度200以下)
赤線区は、JR北海道が沿線自治体と廃線に向けた具体的な議論をしている線区です。[1]根室本線(富良野〜滝川)、[2]留萌本線がこれにあたります。
確かに営業収益に対する営業費用は非常に大きなもので、鉄道で運営するものでは無いでしょう。
しかし、その営業損失は本当に微々たるもので、これらは下から2,3番目に損失が少ない線区です。もちろん少しでも赤字額を抑えるためにこれら路線の切り離しは必要ですが、JR北海道の経営を向上させる根本的解決にはなりません。
黄線区(輸送密度2000以下)
こちらも収益に対する費用を見ると、非常に厳しい状況です。
利用者の回復と、室蘭線・釧網線における駅設備修繕の減少による営業費用38百万円の減少によって、営業損益は縮められました。
国土交通省はJR北海道に対する助成金とは別に、黄線区への支援を別途検討すると発表しています(2020年12月25日)。沿線自治体による負担が厳しい現在、その支援がどれだけのものか、注目すべき点です。
最後に、線区別収支と利用状況の推移について、まとめました。
※各年度第2四半期(4〜9月)として公表。ただし、2019年度の営業係数のみ同年7〜9月。
まず驚くのが、[3]宗谷本線(名寄~稚内)の2021年の輸送密度166。近年、利用者の少ない駅の廃止・自治体による存続を行っていますが、営業損失もそこまで圧縮されていません。
また、[4]根室本線(釧路~根室)の輸送密度も182で、これら2線は輸送密度200以下の赤線区レベルです。
国防上残されると期待を持っていたこれら2線ですが、新型コロナウイルスの蔓延後の輸送密度はかなり厳しい状況であることが分かります。
[16]札幌近郊4線区につきましては、やや客足が戻ってきつつあることが見て取れます。
現在のところコロナ前からの減少率は、札沼線が30%、他は40%以上です。夏休み中に新型コロナウイルスの陽性者数が増加し、観光客を十分に呼び込むことができなかったことも、大きく影響しているでしょう。
現在JR北海道の営業損失のうち、札幌近郊と北海道新幹線が4割近くを占めています。コロナはJR北海道が唯一利益を生み出していた都市部に、大きな影響を及ぼしてしまいました。
この社会情勢が落ち着いたのち、一体どれだけの需要が戻るのか、少々不安を覚えながらもその動向を追って行きたいです。
今回もご覧いただき、ありがとうございました。