【車両使用料6割削減？】JR西日本が特急スーパーはくと区間短縮を智頭急行に求める理由

特急スーパーはくとは関西〜鳥取・倉吉を結ぶ特急列車です。

この列車は上郡〜智頭でJRでない、第三セクター智頭急行線を走ります。

JRは智頭急行の車両を使って運行しているため、JR西日本は智頭急行に車両使用料を払わなければなりません。

(Mitsuki-2368 - Mitsuki-2368 (talk)が撮影, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=5982431による)

また、同じく智頭急行線を走る特急スーパーいなばは鳥取〜岡山を結びます。

こちらはJRの車両で運行しているため、智頭急行はJR西日本に車両使用料を支払う必要があります。

報道によるとJR西日本は智頭急行に対して、特急スーパーはくとの運行区間を姫路発着への短縮を提案してきた過去があったとのことです。

それは、JR西日本が智頭急行に支払っている車両使用料を抑えるためです。

単純に全便の運行区間を短縮した場合、JR西日本は車両使用料をどの程度抑えられるのでしょうか？

車両使用料は「別会社を走った距離×列車本数×1編成あたりの車両数」をもとに算出され、これを列車使用数値として表しました。

スーパーはくとはスーパーいなばの10倍の数値であり、JR西日本は智頭急行の10倍以上相手の車両を使っていることになります。

姫路発着に区間を短縮した場合、14,884.6から5,735.6にまで抑えられ、現行の半分以下の数値です。

JR西日本は智頭急行に対して、2019年には15億円の車両使用料を支払っています。

列車使用数値の減少割合を元に単純計算すれば、姫路までの区間短縮により車両使用料を6億円以下にすることができます。現状の4割にまで抑えられるのです。

JR西日本は因美線の普通列車でも、数多く智頭急行の車両を使用しています。運用が分からず今回はこれを含めていないので、この点の誤差は必ず現れます。

続いて、自民党鳥取県連政務調査会が鳥取県に提出した案の車両使用料も計算してみました。

こちらはスーパーはくとを姫路折返しにした上で、スーパーまつかぜ・スーパーおきが走る鳥取〜米子について、スーパーはくとに1本化するという案です。

更に、姫路折返しに変更する代わりに、スーパーはくとの本数を1時間に1本に増やすとしています。

今回は以下のような運行を想定します。

これを踏まえて車両使用料を計算すると、区間再編成後では17億7466万円に増加。車両数の多い列車を増便した結果、京都〜姫路の運行を全便取りやめても大きく響くことが分かりました。

JR西日本が智頭急行に区間短縮を申し出ていたのは車両使用料を減らしたいためですから、これではJRが望まない結果です。もちろん増便によって需要増加はあるでしょうが、あまりにも大きな投資に思えます。

鳥取県の平井知事は、自民党鳥取県連政務調査会が提出した案について、『智頭急行の経営が成り立たなくなる。簡単には乗れない』としています。米子行きがどれだけ設定されるのか分からないですから、今回の計算結果で車両使用料が増加したとは言え、このような発言になるのは当然でしょう。

智頭急行の運賃収入は年13億円(2019年)、それに加えられるJR西日本からの車両使用料年15億円の削減は非常に大きな問題です。

また、利用者目線からしても大阪から鳥取まで1本で行ける利便性が落ちてしまうのは残念なところです。

一方で、京都〜姫路の所要時間を比較すると、スーパーはくとは1時間26分、新幹線は55分です。

また、京都〜倉吉の指定席特急料金は3480円、京都〜姫路を新幹線自由席、姫路〜倉吉を指定席の場合、特急料金は4250円になります。

1時間に1本とはいかないまでも、姫路発着にして本数を増やすことで、智頭急行と折り合いをつけられるとすれば…区間短縮もありえそうな気がしてきました。

今回もご覧いただき、ありがとうございました。